トパーズ!!
約束の時刻より少し早く到着していたルビーとサファイアは、席のテーブルで静かにその時を待っていた。
ふと、食堂の入り口付近が少しにぎやかになり始める。そこにはいつもと雰囲気の違う二人の姿があった。
普段着ている煌びやかな魔法科の制服はなく、ごく普通の『普通科の制服』に身を包んだトパーズ様と桃
「ね?桃様、この制服ですと目立たずに移動できます。ふふ」
「トパーズ様! そんなスキップなんて目立つことしなくても、本当に大丈夫ですか……?」
朝の澄んだ光を浴びながら、二人で顔を見合わせてキラキラと楽しそうに笑い合う。
男子席で待つ二人に気づくと、桃がぱっと表情を輝かせ、小さく手を振った。トパーズ様ももそれに合わせて、少し照れくさそうに手を振り返す。
その光景をじっと見つめていたサファイアが、眼鏡のフチをすっと押し上げながら、しみじみと呟いた。
「……なぁ、ルビー。『眼福』というのは、きっとこういう状態のことを言うのだろうな」
「はぁ!? お前、朝から何言ってんだ!?」
隣でルビーが思い切り顔を赤くし、カッと目を剥いて怒鳴り散らした。
「別に……! 普通科の制服着てるだけで、いつもとちょっと雰囲気が違うなって思っただけだろ! 変なこと言ってんじゃねぇよ!」
「やけに雄弁だな、ルビー。顔が赤いぞ」
「うるせぇ!!」
サファイアが冷ややかな視線をルビーに向けたまま、呆れたようにため息をついた。
「おいおい、墓穴を掘っているぞ、ルビー。僕は別にトパーズ様とも桃とも限定していない。ただ『朝から二人がキラキラと笑い合っている姿』の話をしただけなんだが……勝手に一人で熱くなっているのは君だろ?」
「うっ……! クソッ、お前わざと誘導しやがったな!?」
ルビーは顔を真っ赤にしたままガシガシと頭をかきむしり、大声でテーブルを叩いた。
「あー! もうこの話はやめやめ!! おしまいだ! ほら、二人もこっち来るぞ、授業行く準備すんぞ!!」
必死に話題を打ち切ろうとするルビーの慌てぶりに、近付いてきたトパーズ様が首をかしげた。
「あら? ルビー、朝からなんだか賑やかですわね。何か面白いお話でもしていましたの?」
「あー! もうその話うやめやめ!! おしまいだ! ……それよりお前ら、事故現場へ行くのは放課後だからな!」
「ええ、分かっておりますわ。今日は午前も午後も授業が満載ですものね」
近付いてきたトパーズ様が、クスリと微笑みながら席に腰かけた。
「午前は基礎魔導理論のテスト、午後は魔法実習の連続……下手に目立ったり居残りを命じられたりしたら、探索どころではありませんわ」
「おう、しっかり授業をこなして、終わったら速攻で事故現場に向かうぞ!」
ルビーの強がりに、サファイアと桃、トパーズ様も思わず顔を見合わせて笑顔になった。
「ところで提案ですの、トパーズなんて名前学園では珍しくも無いですわ、でも様をつけられるとその目立ってしまいますのだからこの制服の時様をつけずに私のことはトパーズとお呼びください。」
サファイアがフォークを置き、静かに眼鏡のフチを押し上げながら頷いた。
「……よし、学園内にいる間は『様』付けを禁止にしよう。もちろん、僕たちのことも含めてね。ルビー、君もいつもの調子で大声で『トパーズ様』なんて呼ぶなよ」
「うぐっ……わかってるって! 俺だってそこまでアホじゃねぇよ!」
ルビーは声を少し落とし、照れ隠しのように腕を組んで身を乗り出してきた。
「要は、どこにでもいる普通の友達同士に見えればいいんだろ? ……よし『トパーズ』って呼び捨てにするか」
「ふふ、潜入捜査みたいでなんだかわくわくしますわね! 桃様……いいえ、『桃』。私のこと、ここでは気軽に『トパーズ』って呼んでくださる?」
「っ……と、トパーズ…!!」
「はい」
「…トパーズ!!」
「ええ、」
「トパーズ!!!トパーズ!!」
「ふふっ、桃ったら! そんなに連呼されたら、こちらまで顔が熱くなってしまいますわ!」




