いらっしゃい
「流石に男子を女子寮に忍び込ませるのはかわいそうだと思いましたの。ふふっ」
トパーズはコロコロと鈴を転がすように可愛らしく笑った。
「本当ですよ! 普通科の男子が女子寮に忍び込んだなんてバレたら、一発で退学処分ですって!!」
サファイアが心底冷や汗をかいた表情で訴え、ルビーも「おう、流石のオレも今回ばかりはマジでムリだと思ったぞ……寮母のおばちゃんの圧……夢に出てきそうだった……」と震えている。
「2人がバレないように先回りしてスニーキングするの大変だったんですよ!」
桃が必死に援護するように言うと、トパーズは悪戯っぽく微笑んだ。
「うふふ、実は先程、お二人が寮母さんの裏をかこうと必死に影に潜んでいるのを見かねて……陰からこっそり『人払いの魔法』でアシストして差し上げましたの」
「……じゃ、じゃあ、あの時寮母さんが急に明後日の方向を向いたのは!?」
「ええ。お二人の必死なお顔が面白かったので、少しギリギリまで観賞させていただきましたけれど。ふふっ」
「「ええっ……!?」」
気付かないうちに魔法をかけられていたことを知り、ルビーとサファイアは脱力して一気に肩の力を抜いた。そんな二人の様子がおかしくてトパーズが再びくすくすと笑い出し、つられて桃も「ふふっ」と笑顔をこぼした。
「いらっしゃい。お茶くらいしかおもてなしできませんけれど、ゆっくりしてらして」
トパーズは上品な笑みを浮かべ、優しく三人を見つめた。
「ちなみに……ここの隠し通路を知っているのは、我が一族と学園創設者のみですわ。魔法科の寮にいると、朝から晩まで他の方や執事たちに囲まれて気が休まりませんの。……ここは、私が唯一『ただの私』でいられる場所なんです。ビクビクしなくとも、絶対に大丈夫ですのよ?」
それなら、一週間図書館でいくら探しても見つからなかったわけだと、桃は密かに深く納得していた。




