番外編 私たちにも守らせて
「はいあーーーん、うん、もうなーーーんも心配しなくて良いわよ! ルビーくん良く辛い治療も耐えたわね、よしよし」
ポンポンと背中を叩いて「完治!」とにこやかに告げる医務室の先生。
「長かったわね……本当にありがとう、ルビー…」
こうなった原因を昨日のことのように覚えているトパーズは、目元に涙を浮かべる。
「あの能天気な声にまた悩まされるのか………」
はぁ…と額を押さえながらも、サファイアの表情には隠しきれない安堵が滲んでいた。
「久しぶりにルビーの声が聞けるんだね! あのねルビー、言って欲しい言葉があるんだ」
潤んだ瞳でルビーを見上げるローズ。
「おう、お前らおかえり。……あー、やっと自分の声で言えたわー」
ニッと八重歯を見せて笑うルビー。
「ただいまっ…….!!」
「まだローズが何も言ってないのに、言って欲しい言葉が分かるのか……。流石は幼馴染。いや、僕も分かったけどさ」
ため息混じりにサファイアが笑う。
「さぁさぁ、もう昼休みなんだし、これからは好きなものも食べていいんだから! しんみりしてないでご飯行ってきなさい!」
先生は男子二人の背中をバンと叩き、医務室から押し出した。
ーー食堂
「それで、産業革命の負の遺産の話なんだけど」
真剣な眼差しで切り出すトパーズ。
「えー〜、今その話かよ〜。せっかく何でも食べられるようになったのに……うわっ、うまっ!」
エビフライを頬張り、久々の味覚に感動するルビー。
「本当にやるの……? 死者との会話…?」
話の重さとは裏腹に、おにぎりを伸ばす手が止まらないローズ。
「二人から琥珀のかぎ針の話を聞いたが、壮絶だったんだろ? 誰かがやらなきゃいけないのは分かっているが……」
インペリアルトパーズは国の貴族だ。理解はできても、気持ちがついていかないサファイア。
「ふふ、ごめんね二人とも。わたしの立場だからやらなきゃって気持ちももちろんあるけれど……でも、これがわたしの使命だってあの時思っちゃったのよ」
困ったように微笑むトパーズ。
「なら、オレも連れてけ」
「「「!?!?」」」
「もう魔力を無効にできる桃も蒼もいないんだ。誰かが止めなきゃだめだろ。テレパシーで止めてやるしか方法が無いんだしな」
ルビーはエビの尻尾まで嬉しそうに口へ放り込んだ。
「っ…ルビーの言う通り、一理あるわ………お願い、一緒に来て」
トパーズの掲げるカップの手が、かすかに震えていた。 その上から、ルビーの手がスッと重なる。
「任せとけよ。そうすれば、ずっと一緒にいられるだろ」
ニッと無邪気に八重歯を覗かせるルビー。
「……っ! 本当に、そういうところよ……!」
トパーズは勢いよくそっぽを向くと、照れ隠しのようにスコーンを口へ運び、ミルクティーで流し込んだ。
「ねぇ、サファイア。私たちが向こうでやってきたこと、ここでもできるよね?」
「ああ。学園なら糸を作る撚糸機ねんしきもある。スカーフの時より、もっと強い魔法を込められるはずだ」
ローズとサファイアが視線を交わし、真剣な瞳で二人を見つめた。
「私たちが最強の防具を作る。神父さまが着ているものよりずっと強靭な服を、糸から紡ぎ上げるから……2人を私たちにも守らせて!」
「ありがとうローズ…」
驚きながらも愛おしさのこもった声を出すトパーズ
「まずは対死者用の魔法を調べるところからだな」
サファイアがメガネを光らせた。




