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魔法のない普通科で。    作者: ワイ
追憶と残響の桃
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番外編 もっと素直に生きろよ

ルビーが魔法科の授業にも顔を出すようになってから、しばらくが経った頃のことだ。

「はぁー……疲れた」

屋外での実技授業を終えたルビーは、汗を拭いながら男子更衣室の重いドアを押した。

着替えようとボタンに手をかけた、その時だった。

「なぁ、ルビー」

隣のロッカーで着替えていた魔法科の男子生徒が、どこか落ち着かない様子で声をかけてきた。

「お前さ、普通科のローズさんと仲良いよな? ……彼女って、その……彼氏とか、好きな奴とかいるのか?」

(あ?)

予期せぬ名前が飛び出し、ルビーは思わず着替えの手を止めた。

答えはもちろん『イエス』だ。——ただし。

(あいつ、まだ一言も言葉にしてねぇんだよなぁ……!!)

脳裏に浮かぶのは、真面目な顔をしてメガネの位置を直すくせに、ローズのことになると途端にポーカーフェイスが崩れる幼馴染の顔だ。自分の気持ちすらまともに伝えられていない男のために、わざわざ義理を立てて守ってやる筋合いなどない。

ルビーはニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。

「うーーん、知らねぇな!」

あっけらかんとそう答えつつ、ルビーはテレパシーを起動し、遠く離れたトパーズへと意識を飛ばした。

『——ってことがあってさ』

『なっ……!? ローズにそんな男の影があるの!?』

本気で不快感を露わにするトパーズの反応に、ルビーは思わずくくっと喉を鳴らす。

『ローズは男子からの人気が高いからなー。まぁ、喋らないで魔法も使わなければ?よく見たら可愛いし?』

『……ムッ』

念話越しでもハッキリと分かるほど、トパーズが不機嫌そうに眉をひそめた気配が伝わってくる。

『っ……くくっ、冗談だって! オレにとって一番可愛いのはトパーズだよ。さて、この件を知ったら、あのサファイアの奴はどうするかなー?』

男子寮の部屋に戻るやいなや、ルビーは不敵な笑みを浮かべてその爆弾を投下した。

「——ってことがあったぞ、サファイア!」

「……………!?」

ルビーの言葉を脳内で処理した瞬間、サファイアの動きが完全にフリーズした。数秒の静寂ののち、ポーカーフェイスが見事に崩壊する。

「なっ……! ローズを、そんな目で見てる男がいるのか……!?」

「んで? お前はどーすんの? あっちの世界の『蒼』は、ちゃんと桃に気持ちを伝えてただろ?」

「僕、僕はそんなんじゃないって……!!! ったく……ローズは目を離すと危なっかしいから、ただ心配なだけで……!」

顔を真っ赤にしながら、必死に平静を装うサファイア。

その見苦しい言い訳を聞いた瞬間、ルビーの顔からニヤケ顔がスッと消え去り、重く深い溜息が漏れた。

「はぁぁぁ…………お前さぁ……もっと素直に生きろよー」

一切の冗談を排したルビーの本気の呆れ顔に、サファイアはぐうの音も出ずに口を噤むのだった。

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