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魔法のない普通科で。    作者: ワイ
追憶と残響の桃
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大丈夫だね?

蒼もきっと同じ気持ちだと思う。

私達、幸せだよね。

「やっぱり学食っておいしーよねー! なによりさ、このガヤガヤしてるなかでみんなと食べてるってのが、なんか楽しくない???」

ポテトを口に運びながら、桃がニコッと満面の笑みを咲かせる。

「うふふ、同感ね。なんだかんだ学校って落ち着くのよね……まぁ、桃が来てからの話だけど」

トパーズも嬉しそうに微笑みながら、サンドイッチをつまんだ。

『なぁ〜、オレのポタージュスープが無いんだけど……桃、知らねーか??』

「……ですって。……桃?? 口元にスープが付いているわよ?」

「へっ!? そ、そんなことないよ!?」

慌てて口元を拭う仕草をする桃。

『あいつ!!! ついにやりやがった!!!!!』

ガタッと勢いよく立ち上がるルビー。

「わかったよー! 持ってくるよー! ちょっと先にもらっただけじゃんか〜!」

桃はテーブルの間を縫うようにして、逃げるように走り出した。

「こらー! 人の多いところで走るなよ、桃ーー!」

「はーーい、蒼お母さん!」

「誰がお母さんだ!!」

周囲の賑やかさに紛れて、呆れ顔の蒼の怒鳴り声が学食に響き渡った。



夜――トパーズの自室あのディスクオルゴールが流れている。

「ねぇ、トパーズ」

桃は温かい風を出す魔法具を手に、トパーズの濡れた髪を優しく乾かしながら静かに問いかけた。

「ん? なに、桃?」

「私が帰っても……ローズと同じように過ごしてくれる?」

「……もちろんよ」

「ローズが宿題わからないって言ったら、懇切丁寧に教えてくれる?」

「えぇ、任せて」

「ローズが今日の私みたいにルビーのご飯盗んじゃったら、ちゃんと怒ってくれる?」

「そんなこともしちゃうの? ふふ」

「ローズがトパーズの秘密の特訓を見ちゃっても……トパーズは逃げない?」

「ええ。わたしはもう、そんなことしないわ」

「ローズが一緒に寝たいって言ったら一緒の布団で寝てくれる?」

「そんなの大歓迎よ」

「ローズが寝られなくなって、寝不足で酷い顔してても笑ってくれる?」

「そんなの、楽しくて笑うしかないわ」

「ローズがルビーとトパーズの仲をからかっても……トパーズは真っ赤になって恥ずかしがってくれる?」

「ローズまでそんなことするの?? んも〜〜〜」

「ローズが魔法見せて、遊ぼって言っても遊んでくれる?」

「当然よ。そんな楽しいこと、やらない訳ないじゃない」

「…………」

髪を乾かす手が止まる。

「……それなら……私が……っ、私が……っぅ、私がいなくなっても……トパーズは大丈夫だね……?」

鏡越しに視線を重ねたトパーズは、桃の姿にハッと目を見開いた。

トパーズは振り向くと、泣きじゃくる桃を力一杯抱きしめた。

暗い部屋の中、鏡の前で、二人はオルゴールの音をかき消すように泣き続けた――。

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