相部屋
その場所を訪れるたび、トパーズは路地裏でかぎ針を握り、ルビーの手を介して魂たちを一人、また一人とあるべき場所へと還していく。
◇
お姉ちゃん、ここは鎖屋さんだよ! なんだかかっこいいよね!!!
ここはしおり作ってたって!ぼくもいつか使うかな?
ここはね、綺麗なめっき? 作ってたところ! あんまり帰りたくないみたい? おかしいなー?
ここも綺麗な宝石の箱作ってたらしいよ! ぼく子どもだから見たことないけど、あはは!
ここはかぎ針作るところ!ぼく見るの大好き!
◇
死者との会話を重ねるごとにトパーズの息は上がり、額にはじんわりと汗が滲んでいく。
それでも、鍵にまとわりついていた異質な魔力は、魂が還るたび少しずつ穏やかになっていった。
ルビーが握り返す手のひらの力強さと、蒼と桃が差し出す冷たいタオルに支えられ、トパーズの瞳から光が消えることはなかった。
そして――夕暮れ時。
街の明かりがひとつ、またひとつと点灯し始めた頃。
最後の場所を終えたトパーズが、肩で息をしながら顔を上げた。
「……はぁ、はぁ……これで、地図に載っていた場所は……全部……」
あの子の案内のもと、たくさんの魂を還してきた。
けれど、あの子自身の足は、まだ止まっていない――。
「っはぁーー! はぁーーー……ふぅ……っ」
「トパーズ、冷たい紅茶だよっ……!」
「こんな、何かあったかもわからないような跡地や家を一軒一軒尋ねていくなんて……」
『新月まで時間はまだある。無理すんな、トパーズ』
「違うのよ……っ、私が早くあの子を還してあげたい…!まだっ」
「魔力の多いトパーズでも、こうして常に使い続けていたら枯渇してしまう。砂時計も見ろ、少し休むべきだ」
蒼が差し出した砂時計の砂は、すでに残りわずかとなっていた。
「っーーーー!!」
トパーズは悔しそうに言葉を詰まらせ、ギュッと下を向いた。
ホテル内――。
ルビーとトパーズが休んでいる客室の扉が、軽くノックされた。
「トパーズ? 入るよ」
蒼の声とともに、桃と蒼が部屋の中へと入ってくる。
『はぁ? お前、オレには確認しないわけ?』
イスの上で手をつないだまま、ムッと蒼を睨みつけるルビー。
「……ですって、ふふ」
「トパーズ!! もう休めた?」
桃が笑顔で駆け寄ると、トパーズはぱっと表情を明るくした。
「ええ! 今、桃の顔を見たら一気に元気が出てきたわ!! 今日も一緒に寝られないのが残念ね」
「何言ってるのよ〜! ルビーと手を繋いでないと、おばちゃんに怒られちゃうんだから仕方ないじゃない!」
ヘラヘラと笑いながら返す桃。
『え? 何それ、オレ聞いてないんだけど』
「知らなくていいの!!!!!!」
真っ赤になってルビーの疑問を叫び声で遮ったトパーズだったが、ふと悪戯っぽい笑みを浮かべると、今度は桃と蒼へ視線を向けた。
「……うふふ、あなたたちも誰と相部屋かわかっててそれ言ってるのよね……?? それじゃ、仲良くしてね?」
「っ!?個室じゃないの!?!?」
今度は桃の顔が一瞬で林檎のように真っ赤になり、隣にいた蒼も気まずそうにゴホンと咳払いをしたのだった。
まさかお父様も男女男女の相部屋になると思ってないよね。




