もう勘弁してください
「あれー? お姉ちゃんだけじゃなくて、お兄ちゃんもいるー? ラブラブー?」
!?
「そーだぞー、ラブラブだぞー!」
全く…いつも、変なことばかり言うのだから
医務室―――
新しい医務官……かつての女子寮のおばちゃんが、ルビーの状態を確かめるようにカルテを繰る。
「んもぅ、トパーズ様! いくらテレパシーが使えるくらい相性が良いって言っても、付き合わせていい魔法じゃないですよ! こんな無茶なことさせて……今は鎮静剤と痛み止めで寝てますけど、せっかく塞がりかけた喉の傷が、また開いちゃうところだったんですからね!」
おばちゃんはパチンとカルテを閉じ、しっかりと、けれど温かく叱ってくる。
「ごめんなさい……寮母……いいえ、医務の先生……」
「でもねぇ、この年齢でテレパシー使えるなんて素晴らしいわねぇ。寝てはいますけど、ずっと呼びかけてあげてくださいね? 圧倒的に回復力違いますからね、やっぱり愛の力は偉大ですねぇ、んふふ〜……あらもうヤダぁ!」
まるで昼メロでも見ているかのような態度のおばちゃんに、トパーズは思わず抗議しようと立ち上がった。
「んな!?」
「え? トパーズ様はご存知ではないの? テレパシーを使える相手っていうのはね……?」
おばちゃんはニヤニヤと意地悪そうに微笑むと、身を乗り出してトパーズの耳元でコソコソと何かをささやいた。
「……っはぁ!?? へぇ……っ!???」
おばちゃんから告げられた言葉に、耳まで真っ赤に染め上げ、恥ずかしさと動揺でプルプルと震え出すトパーズ。
そんなトパーズの反応を大満足そうに見届けながら、おばちゃんはニシシと意地悪く笑って追撃した。
「トパーズ様だってわかってたでしょ? 無茶な魔法やってても隣でいてくれた時回復してたの。んふふふふ……」
「〜〜〜〜っっ!????」
砂時計が早く回復しているとは思っていたが、トパーズはついに言葉を失い、顔から火が出そうなほど沸騰してしまう。
(確かにこの1週間、ずっと隣でルビーは支えてくれてたけど、それがわたしの……!? って事は、テレパシーが使えたのはルビーが禁術使った直後で……ほんとにあの言葉は……いやでも……っ!!)
トパーズの頭の中で、今までのルビーのセリフがぐるぐると渦を巻く。
「あっほら、手離しちゃダメですよ! 同じ波長で触れ合って魔力を巡らせるのが一番の特効薬なんですから! トパーズ様だって普通の子なら監禁レベルなんですからね!」
動揺のあまり思わず手を引っ込めようとしたトパーズの手を、おばちゃんはガシッと掴み、ベッドで眠るルビーの手とギュッと重ね合わせた。
「も、もう勘弁してくださいぃ……っ」
泣き出しそうな悲鳴をあげて顔を覆うトパーズ。
その瞬間――睡眠薬で深く眠っているはずのルビーの指先が、ぴくりと動いた。
そして無意識のうちに、トパーズの手をぎゅっと優しく握り返してきたのだ。
伝わってくる柔らかな体温と確かな生命の脈動に、トパーズの鼓動がドクンと小さく跳ね上がった――。
ーー医務室のドアの前
「どうしますか蒼さん、突入しますか!?」
ぼそぼそと囁く桃。
「いやあえてここは荷物を置くだけにしよう」
眼鏡をキラリと光らせる蒼
コンコン、とドアをノックした後、開いたドアの隙間から二人の着替えが勢いよく投げ込まれた。




