諦めが悪い
「私はあなたの本当の母ではないけれどあなたとトパーズの幸せをずっとずっと願っているわ、ありがとう、楽しかったわ」
「紅子さんどうかあの子達の力になってあげてください…」
(足りない負担はオレが背負う。オレだって言い出しっぺだ)
ルビーがノートに走り書きし、蒼に突きつける。
『それに、こうすればトパーズの側で、トパーズとずっと一緒にいられるしな』
へらっと笑うルビーの横顔に、トパーズは絶句した。
「はぁ!? 今そんなこと言ってる場合……っ!」
『今だから言うんだよ。思いは魔力を超えるんだろ? だったら、こんな普通科のオレだってすげー事できるだろ。オレはお前を守りたい、誰よりも背負わせてくれ』
「……っ」
ふぅ、と。トパーズが深く息を吐き出す。
その瞳には、恐怖ではなく静かな決意が灯っていた。
「蒼、悪いわね。あの子と話してくるわ」
ぶわっ、と再び強烈な魔力が溢れ出す。
◇
「あれー? お姉ちゃんだけじゃなくて、お兄ちゃんもいるー? ラブラブー?」
「なっ、なにいってるのよ!?」
「そーだぞー、ラブラブだぞー!」
「へー、いいなー。帰れるところ、あるんだね」
「お前らもみんなで帰ろうぜ? な? どこ住んでんだ?」
「うーん、この鍵作ったところ! 他にもたくさん、銀製品作ってたんだよ!しおりとか!」
——ブツン。
◇
「ルビーーーー!!!!!!! やだぁ……トパーズ!!!!! 起きてよ……!」
桃が手を繋いで魔法が強制的に断たれ、ルビーとトパーズが同時に床へと崩れ落ちる。
桃は必死に二人の体を抱き起こし、泣き叫んだ。
「お前たち……! 二人で何話してたんだっ……!」
蒼は青ざめながら、倒れた二人の脈を確認する。
地面の二人はピクリとも動かない。
やがてゆっくりとトパーズが立ち上がる。
「もうやめてくれ…たくさんだ…!!呪いなんて解かなくても今の条件さえ揃っていれば入れ替われるはずじゃないのか!?」
蒼の目には悲壮感が漂っている。
「っ…んく………入れ替わりと元に帰れる事は違うはずよ……図書館に行くわよ。ルビー…?少し休みなさい…」
「…………」
コクン、とルビーが微かに、しかし確かに頷いた。
蒼はルビーの体を起こしボロボロになりながらもトパーズの手をぎゅっと握りしめる。
蒼はため息をつきながらも、二人の背中を支えるために手を伸ばした。
「……蒼。申し訳ないけど、私、何も諦めないわ」
トパーズは涙を拭い出して出してあったかぎ針を強く握りしめる。
「桃と蒼も諦めないし、ローズとサファイアのことも諦めないし、家のことも諦めないし……この子たちのことも、絶対に諦めないわよ」
ボロボロの衣服で、血と涙に塗れながらも、トパーズは顔を上げて笑った。
「——インペリアル家は、諦めが悪いんだから」




