手伝い
「手伝って欲しいの」
トパーズから頼まれるなんていったいなんだろう
私にできる事ならなんだってしたい、だって大好きなトパーズの願いだから。
——2週間前
「あの人たちと会話してみようと思うの、バグを引き起こした死者の人たち」
「死者の人たちって……あの列車の!? って、あれ? もう帰ったんだっけ……。まぁいいか、コレよね?」
桃がスッとポケットから取り出したのは、一本のかぎ針だった。
「そうよ。前にやった『魔力感知』と『感情感知』、あの両方をいっぺんにやるあれよ」
『っ……! ふざけんなよ! あんな危険なこと、やらせられるわけないだろ! わかってて禁忌を破ろうとしてるもんじゃねーか!!』
ルビーが過去の惨状を思い出し激怒の声をあげる。
「あの時のをまたやるのか……正気とは思えない……精神論でどうにかなるようなもんじゃないだろ!」
蒼も静かな怒りと強い拒絶の色が浮かんでいた。
「……なんでそんな危険なことするの……ダメだよ! あの時だって、みんな怖かったんだよっ!」
桃が瞳に涙を溜めながら睨む。
「ちょっ……待って、話は最後まで聞いてほしいのよ……。はい、これ」
ジッと怒る三人の前に、トパーズがポンと差し出したもの。
それは以前、ジノが置いていった不気味な鈍色の砂時計だった。
「この砂時計、覚えているでしょう? 魔術師の負荷のリミットがわかるっていう、あの砂時計よ。この砂が落ちきったら、その日はもうおしまい! ね? これなら無理のしようがないじゃない!」
手をパンと叩き軽く言うトパーズ。
『げっ……あの不気味なやつかよ!』
「ふふん。これなら、誰がどう見ても私の限界が一目でわかるわよ!」
不敵に笑うトパーズだったが、目の前の三人の表情はまだ硬いままだった。
「……いくら砂時計で限界が分かったって、危険なことに変わりはないよ」
『そうだぞ、一歩間違えたら脳が焼き切れるんだからな……!』
「う……。で、でも、これがないと私が無茶しちゃうからって、みんなが止めてくれるでしょ?」
上目遣いで仲間たちを頼るトパーズに、ルビーは頭を抱え、蒼と桃はトパーズに流されるしかなかった。
「……本当に、これ以上無理はしないって約束だからね」
『分かったよ……その代わり、少しでも危なくなったら俺たちが強制的に引き剥がすからな』
三人の覚悟を再確認したトパーズは、深く頷き砂時計の設定を自信に変更し、再び杖を構え直した。
『ねぇ、ルビーちょっといいかしら』
ひどいよ、たすけて、愛してるよ、わすれないで、かえりたい、うらむ、殺す、生きてて、殺す、同じ目にあわせる、帰りたい、家はどこ——
脳内を津波のように過る、死者たちの怨念と未練。
「……っ……あっ……あっ……」
助けたい、守れなかった、会いたい、ごめん、落ちろ、同じ目に——
「あや……やめ……っ」
『トパーズ!!!!!!!!!!!』
——プツンッ!
「……ッ!?」
バダッと力なく崩れ落ちるトパーズの身体を、桃と蒼がすかさず滑り込んで支える。
「嘘でしょ……!? まだ10秒も経ってないよ!? トパーズ!! ねぇ!!」
ボロボロと大きな涙をこぼしながら、桃が叫ぶ。
「こんなのやっぱり危険すぎる……! やめるべきだ!」
(やめない)
筆談してあった紙をそっと見せる出すルビー、驚きで凍りつく桃と蒼。
「そうよ……絶対、やめないわ……。何がなんでも……この人たちと、話してみせる……っ」
ゆっくりと目を開けるトパーズ。
ちらりと見た砂時計はまだ落ちきっていない。並外れた魔力が、彼女の意識を強引に引き戻していた。
「次……やるわよ……」
「っ!? 嘘でしょ、もうやるの!? 待ってよ!?」
「っ……………かっ……ガハッ……っ」
——プツンッ!
支えられたトパーズは痙攣し嘔吐していた。




