呪い
放課後。昨日もみんなで座っていた外階段に、4人が集まっていた。
「本当は……こうやってみんなで過ごしているだけで、十分楽しいのに……っ、ごめんね……!」
ポツリと溢れ落ちた桃の呟き。
「……帰りたい気持ちも、帰りたくない気持ちも、絶対に返さなきゃいけない気持ちも……全部本物だから……」
沈み込む桃の頭に、トパーズを介してルビーのあっけらかんとした声が響く。
『なぁに悩んでんだよ。なぁ桃、もし元の世界に帰ったとしてもさ、何か不都合あんのか? オレからすりゃ、お前も向こうの“茜”とかいうやつも同じだろ? 魂が同じなんだから、向こうへ帰ったってきっと今と同じように楽しく過ごせるんじゃねぇの?』
「あのねぇ、ルビー……。いくら魂が同じでも、桃とローズは全くの別人……とも言い切れないくらい同じなのよ……」
トパーズは呆れたように息を吐きながらも、ルビーの不思議な説得力を否定しきれずにいた。
「それに……本当にここに居続けていいのか? ローズのノートを見たけれど、測量学も力学も実用幾何学も、桃よりはできていたぞ?」
蒼のあまりにも容赦ない事実の指摘に、桃は胸を押さえた。
「ひゅッ…………!」
「ふふ。今はタイムリミットを突きつけられて、少し迷っているだけさ。ここで得た経験も知識も、全部魔法を使えるローズに返してやるんだろ?」
蒼の言葉に、桃はぎゅっと拳を握りしめ、パッと顔を上げた。
「っ……ごめん! もう迷わないよ! 弱気もこれでおしまい!!」
「……桃の覚悟、しっかりと見届けたわ」
まっすぐに桃を見つめ返したトパーズ。
「——なら、私も覚悟を決めるわ。みんなに、手伝ってほしいことがあるの」
あまりにも真剣なトパーズの声に、三人は息を飲んだ。
ーー新月の日。学園応接室。
「来たよ、トパーズ。約束の日だ……だが、私は複雑な気持ちだよ」
そう告げるインペリアル氏の目には、実の娘に対する憐れみと、長年の絶望が生んだ諦めが混ざり合っていた。
「……ちゃんと見届けていただきたいんです。私たち四人の行く末と、過去の皆さんの気持ちを。——桃、やりますわよ」
空には新月が昇っている。
「うん!」
桃は強く頷くと、自分たちの現実の命綱であるかぎ針を、静かにテーブルの上へ置いた。
トパーズの手をルビーがをぎゅっと強く握りしめる。そして桃と蒼も真剣な眼差しで全体をしっかりと見守り、構えていた。
——ぶわっ!!
トパーズが杖を前へと掲げ、全身の魔力を解き放つ。
「魔力感知か……。何度もやったさ。だが……この呪いは絶対に打ち破れないよ」
「違いますわ、お父様。私がやるのは、ただの魔力感知ではありません。……死者たちの『感情』に、直接呼びかけるのですよ……!」
——ザザザザザザザッ!!
壊れたラジオのノイズのようなひどい魔力が響き渡り、狂気的な量の「死者の念」が溢れ出す。
その凄まじい衝撃波と圧迫感にインペリアル氏は顔を青ざめる。
「お前、一体何を……?」
手を繋ぐルビーの肌にも死者の圧力となって伝わってくる。それでもルビーは決して手を離さず、後ろの桃と蒼も魔力無効で邪魔にならないように一歩引く。
けれどトパーズの瞳は、一瞬たりとも怯むことはなかった。
「私だって……!! ただの二週間、子どもでい続けたわけじゃないのよッ!!!
——手伝う?
そう、私ね……あの人たちと、対話してみようと思うの」
(——13日前.期限残り13日)
ラストスパートです。
もうちょっとだけ続くんじゃー




