前にもあったね?
1ヶ月間に及ぶお祭りが終わり、学園にはいつもの授業風景が戻ってきた。
だが、その景色は以前とは確実に異なっている。
学食内だけでなく学園全体で、かつてあった魔法科と普通科の壁は綺麗に消え去り、どの生徒も当たり前のように笑顔で対等な会話を交わしていた。
朝の食堂で、4人はいつもの席に集まっていた。
「ねぇ……本当に今日から授業再開するの……? 不安でしかないんだけど……これじゃご飯も喉を通らないよ……」
そう言いながら、桃はすでに4つ目のパンに手を伸ばしている。そのあまりの言行不一致ぶりに、3人は呆れたように笑いを漏らした。
「くっく……食べすぎだって桃。とは言いつつも、僕もこの世界の授業はおろか教科書すら見てないんだけど……」
桃よりも青ざめた顔で眼鏡の位置を直す蒼。そんな2人を、トパーズはミルクティーのカップを手に余裕の笑みで見つめた。
「昨日も言ったけれど、安心して頂戴。2人の成績については、実質問題ないように私の方で根回しを済ませておいたわ」
『スコーンとミルクティーを優雅に楽しみながら言うセリフじゃねぇな……』
ボソッとツッコミを入れたルビーに向かって、トパーズはぴしりと指を指す。
「も ち ろ ん? ルビーは例外よ?」
『ですよねぇ…………』
ガックリとテーブルに突っ伏し、うなだれるルビー。その情けない姿に桃と蒼が小さく吹き出した。
「だからほら、特別に……バケツプリンとまでは言えないけれど、特注の大きなお手製プリンをお父様の執事に頼んでおいたわ。ふふ、もちろんみんなの分もあるわよ」
『この間、食べ損ねたものね』
トパーズは桃に気を使わせないよう、ルビーにだけ届くようにそっとテレパシーを送る。
『さんきゅーー!! マジで嬉しい!!』
パッと顔を上げたルビーの視線の先で、隠し持ってきた箱を開ける。
「な、なにこの黄金のプリンは……! 光り輝いてる……!?」
「こ、こんな素晴らしいものを僕たちの様な下僕がいただいて良いんでしょうか……!?」
「……口調が気持ち悪いわよ蒼」
眩い光沢を放つ特大プリンに、桃と蒼の目が釘付けになる。トパーズは満足そうに微笑むと、優雅に立ち上がった。
「さっ、しっかり味わったら、授業に行きましょ!」
「ねぇ………測量学ってなに…………」
真っ白に燃え尽きた桃が利き手の反対の手でミミズの這ったような字でノートを取っている。
「計量学(けいりょうがく、英: metrology)とは、計量・測定・計測・度量衡を研究対象とする学術分野。『国際計量用語集』(JCGM 200:2008) によると、「計量学は測定対象の分野や測定の不確かさを問わず、測定という行為のあらゆる理論的および実践的観点を含む」とされる[1]。日本語では測定学、計測学(けいそくがく」Wikipedia参考
(そういう事聞いてんじゃねーよ……)
同じく隣で燃え尽きているルビーが、力ない筆談で伝えてくる。
「あの、次の授業は魔法科で使うので退いてくださる?」
凛とした声にハッと目を覚ます。
「トパーズ!」
ぎゅっと桃が抱きしめる。
「あら? ふふ、このやりとり前にもあったね?」
くすくすと鈴を転がすような声で笑うトパーズ。
「あら、あのオルゴールを作ったチームの皆さんですのね?」
「私あの音に感動しましてよ!」「魔法を使わないアイデアとは逆転の発想ですわね!」「私はあの彫刻に一目惚れしましたわ〜」
魔法科の子達が次々と話しかけてくる。
「わっわっ…ありがとう…、褒められ慣れてないから照れちゃうなぁ、でもこの4人だからやれたんだ!」
桃は胸の中で静かに想う。
(本当は5人だけど…ってあれ? ちょっと私たちズルしてる? まぁ言わない方がいい事もあるか…)
「あ、そろそろ僕たちも移動しないと、さ、急ぐよ2人とも!」
蒼がルビーと桃の荷物も持ち、教室を移動する。
「3人とも!! 昨日のあそこで放課後また!!」
「「はーーい」」
3人は手をひらひらと振り返した。




