車椅子
展示大ホールへと生徒たちが続々と集まり、それぞれが1ヶ月間情熱を注ぎ込んだ作品を丁寧に並べていく。
「あーーー俺の、俺たちの魔道具ちゃん……!!」
「えーすご!! でも私たちのだって絶対すごいって!」「離れるのが嫌だーー! 最後にチューしよ、チュー!」「お前流石にやめろーー!!」
熱気と歓声に満ちた会場の中に、作り上げたオルゴールとディスクを並べ終えた4人は、少し離れた人気のない外階段へと集まっていた。
『展示大ホールってすごいな……あんな広いところが学校にあったんだな、知らなかったぜ』
「そうよ、あそこはとても広いし綺麗なところなの。今までは魔法科しか使わせてくれなかったのよね……おかしいわよ、同じ学生なのにね?」
『そこも計算済みで、もしかしてトパーズ"様"はクラフトコンテストを提案したのかよ?』
「……なんですって? さー? どうかしらね? でも生徒だけじゃなくて、教師たちにも良い影響があったみたいね」
ふふ、と誇らしげに胸を張るトパーズ。
「表彰式は夕方か……トパーズのお父さんに話をするために表彰を狙って必死になってたけど、状況が変わりすぎて正直僕は感情の整理がついていないよ……」
『へー、お前もそんな弱音吐くんだな。まあとりあえず楽しめよ。いろんなチームのクラフト見るの、俺は楽しかったぞ』
「……だそうよ。でもね、この際表彰されようがされまいが、帰る前にお父様をとっ捕まえて話を聞いてやるわ。学校に来ているくせに娘に会いに来ないなんて、絶対に許さないんだから」
「……ん? 桃? 大丈夫か?」
蒼の声に視線をやると、桃がポツンと下を向いてうつむいていた。
リストの恐怖に押し潰されているのだと思い、ハッとして優しく寄り添う。
「桃、大丈夫よ。何があっても絶対にわたしが守るから、安心して——「ねぇ!!! みんなのクラフトすごかったよね!? あれどうやって作ったんだろ!? ネジも接合部もないのに箱状になってるのもあったよ!? ねぇ! ルビーもっと見たいよね!? 私が車椅子借りてくるから! 夕方までしかないんだよ!? 一日中歩くんだったらまた傷開いちゃうかもしれないしもう一回見に行かない!?? 私が車椅子押すからさ!!!!!?」
「ハァーーッ!?……っ、ぶっ、あははは!!!」
あまりの勢いと予想外の理由に、三人の爆笑が静かな外階段へ弾けるように響き渡った。
『お前、自分も手足を怪我してるくせに、人の心配して車椅子押すつもりだったのかよ! 本当にお前は……!』
「……ですって!! 本当に桃、何を言い出すかと思ったら……深刻になってるのかと思いきや、ただ全力で展示を見直したかっただけなのね!」
くっははは、とお腹を抱えて笑い転げるトパーズ。
「はぁ……まぁ、時間はそのうち来るんだ。今は楽しんでおこうか。僕も一人で悩んでいたのがバカらしくなってきたよ」
やれやれと肩をすくめる蒼の表情からは、先ほどまでの暗い影が綺麗に消え去っていた。




