↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法のない普通科で。    作者: ワイ
追憶と残響の桃
112/148

行ってきなさい

トパーズはふと、かつて目にしたジノの[観察日記]の記述を思い出していた。

「……桃の入れ替わりは、子供を助けるため……。ローズの入れ替わりも、子供を助けるため……? サファイアは、ローズを助けるため……」

ポツリ、ポツリと溢れ出る言葉。

それが何を意味しているのかに思い至った瞬間、トパーズはキッと鋭い視線を蒼に向けた。

「蒼。……まだ、わたし達に話していないことがあるわね? あなた……何を願った時にここへ来たの??」

「びくっ!」と蒼の身体が大きく跳ねる。

(今さら何隠したって変わんねーだろ? 仕返しだ、言え)

ルビーが筆談の用紙を掲げ、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら蒼を追い詰める。

「っ……はぁ……。僕はあの時……本物の縫製機をローズに見せるために、琥珀や茜達と一緒に見学に行っていたんだ」


「これも見たことあるよ!」

自慢げに胸を張るローズに、蒼が微笑みかける。

「やっぱり、産業革命の初期くらいのものはローズも知っているんだね」

「ここの縫製機は、残っているものでもまだ動く貴重な物なんですって! だから絶対に触ってはダメよ! 絶対によ!……特に、茜!」

企画者である琥珀が釘を刺すと、いきなり指名された茜が不満そうに顔を顰めた。

「な!? なんで俺なんだよ!? さすがの俺でもそんなことしねーって!」

「これもこれも実際に見たことあるし、なんなら授業で似たようなの使ったことあるよー。将来、魔力の少ない私達は、こういう[さんぎょーかくめー?]の道具と魔道具を組み合わせて仕事することが多いからねー」

私知ってますけど? と言わんばかりにフフンと鼻を鳴らすローズ。

だが、次の瞬間、彼女はふっと視線を落とし、寂しげに呟いた。

「……でも、戻れる保証なんて、どこにもないんだけどね……」

「……っ、諦めるのか!? 僕は諦めてないぞ!」

蒼は思わず感情的になり、ローズの肩を強くだ掴んだ。

「僕は絶対に、絶対に諦めないぞ! ローズを帰すこともそうだ……! 桃のことを、僕は絶対に助ける……!!」

「蒼、そんなに熱弁しなくてもわかってるよ! 落ち着けって!」

急に熱くなった蒼を茜が焦って止めに入るが、蒼の勢いは止まらない。

「ずっと探し続ける……!! 絶対に、一生かけたって……!!!」

熱く叫んだその勢いのまま脚を滑らせ——蒼は「触るな」と厳重に注意されていた縫製機へと豪快に倒れ込んだのだった。


——現在。

「……ふぅ……やっぱりハーブティーは、桃の淹れたものが一番美味しいわね。魔法のお茶よ」

ーートントン(ノック2回イエスの合図)

「そ、そうかな……?」

うつむいたまま、みんなと目を合わせられない桃。

(ほら、言っちまえよ)

ニヤニヤと筆談で追い討ちをかけるルビーの文字が煽る。

ついに限界を迎えた蒼が、ガタッと勢いよく立ち上がった!

「っ〜〜〜!!! そうだよ! 僕は誰よりも桃が大切なんだよ!!!」

「……ぁっっ……!?」

叫んだ当人の蒼も、言われた桃も、首筋まで真っ赤にして勢いよく下を向いてしまった。

静まり返るテントの中、トパーズが可笑しそうに隣のルビーを見た。

「ねぇ、ルビー? わたしたち、あの2人に散々いろいろ振り回されたと思わない?」

(同感だ)

ルビーが無表情を装いつつ、速攻で文字を走らせる。

「とりあえず、わたし達すごーーーく疲れているの。わかるわよね?……でも、禁書庫にはまだ、わずかに読み切れていない本が残っているわ。ね? この意味、わかるわよね?……行ってきなさい? ふたりで」

にっこりと微笑みつつも、メラメラと復讐の炎(からかい)を燃やすトパーズとルビー。

その圧に押された蒼と桃は、真っ赤な顔のまま何も言えず、逃げるようにテントを後にしていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。