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魔法のない普通科で。    作者: ワイ
オルゴールの音と桃
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わたしとルビーで

「おはよーー!!!! 今日から食堂集合に戻れたの嬉しいね! この騒がしい中ご飯食べるの好き!」

頭と足、そして右手に痛々しく包帯を巻いているものの、桃はいつもの元気な声を響かせる。

「おはよう桃、トパーズ」

蒼に付き添われながら歩いてきたルビーの姿に、トパーズは思わず肩をビクッと跳ねさせた。

ルビーがすっと前に手を差し出す。トパーズもおどおどと震える手を差し出した。

『叩いてごめん。これでおあいこな?』

脳裏に響いたルビーの不器用な言葉に、トパーズは目を丸く開いた。そして、溢れ出そうな嬉しさを噛み締めながら、心の中で強く頷く。

『うん……っ!』

「あっ! 今日のルビーのご飯ビスクかぁ……いいなぁ……」

『なぁ!? なんで桃はいつも俺の飯狙ってくるの!? なんで!?』

「っぷ……ははは!」

二人のやり取りに、トパーズの口から思わず楽しそうな吹き出し笑いが漏れた。

「トパーズ、やっと笑った」

ひひ、と満足そうにおどけて笑う桃。

「あ!私ジノに包帯変えに来るように言われてたんだった!ご飯食べたらトパーズ、一緒に付き合ってよ!」


「さぁ、クラフト大会まで明日だけど、最後だしテントにGOだよ!」

『久しぶりだなー、テント』

「そもそも部屋以外が出歩くの久しぶりなんじゃないの、ルビー?」

トパーズは、隣を歩くルビーの手を優しく握り直す。

「…くっははっ、僕は琥珀を見てたから、トパーズのお嬢様喋り、全然似合ってなかったからさ。今のこの感じの方がしっくりくるな」

元の世界の友・琥珀の面影を思い浮かべながら、蒼がふっと柔らかく笑う。

「ねー! やっぱり魂が同じだからか、無理してそうだなって見ててわかってたんだけどさ」

反対側からトパーズの手をぎゅっと繋ぐ桃。

「っ……!? そ、そんなに変だった……っ??」

一気に顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに狼狽えるトパーズ。

「いや、学園にいるときは、ちゃんと煌びやかなトパーズ様に見えてたよ」

静かにフォローを入れた蒼は、息を乱さないよう慎重に歩くルビーを支えながら、最後の仕上げ作業が待つテントへと、みんなでゆっくり歩みを進めた。


テントの中、小さく置かれたオルゴールを中心に、4人でぐるりと囲む。

桃はぐるぐると包帯の巻かれた自分の手を見つめながら、ぽつりと呟いた。

「……………私ね、本当はみんなの名前彫りたかった」

『俺が……「だからわたしとルビーで彫りたいのよ」

ルビーのテレパシーを遮ってトパーズがルビーを見つめる。

「さっき、2人でジノに聞いてきたんだ」


―――さかのぼること、医務室。


「ねぇ、この手で彫刻刀って持てると思う?」

包帯を巻かれながら、桃が何でもないことのようにジノへ尋ねる。

「へぇ?? いやぁ、何言ってるか聞こえなかったなぁ? もう一回言ってくれる? ん??」

「今いるメンバーで、どうやったら彫刻刀を持てるか聞いている! 答えろ、人形!」

すかさずトパーズが割って入り、鋭い眼差しで詰問した。

「もう一人の無能力者くんにやらせればいいじゃん……あっ、でも怪我人増えるのはごめんだなぁ……ただでさえ忙しいのにさ。……あっ、稚魚くんとマスター様で彫りなよ。マスター様の魔力で稚魚くんの身体を支えてあげてさ〜。え? 稚魚くん1人で彫る? そんなチマチマした彫刻刀でも、必死こいて握るとジワジワ血圧上がるよ〜? 途中でクラッとしても知ーらないっと……できるでしょ? 熟年夫婦なんだから」

ボコんッ!!


―――現在、テントの中。


「……だそうよ。わたしとやってくれる? ルビー」

トパーズの瞳は真剣そのものだった。

『任せろ。久々にできるんだ、腕が鳴るな!』

ルビーはニッと屈託なく笑ってみせる。

ルビーが彫刻刀を固く握りしめた。だが、刃先を木肌に当ててぐっと力を入れようとした瞬間、腕が微かに震え、胸の奥と喉元に引きつるような圧力がかかった。

『つ……っ、力が入らねぇ……!』

「ちょっ、ダメよ! わたしとやるって言ったじゃない!」

もどかしさに歯噛みするルビーの背中に、そっと柔らかなぬくもりが重なった。

トパーズが、ルビーの背中に手を優しく添える。

「……本当、せっかちなんだから。ルビーは」

呆れたような、けれどどこまでも愛おしそうな優しい声。

トパーズが静かに瞳を閉じると、手元から淡い黄金色の魔力の光がぽっと灯った。

じわりと温かい魔力がルビーの体内へと流れ込み、体幹にかかる負荷をふわりと受け止め、消し去っていく。

トパーズから注がれる魔力によって身体の重みがふっと消え、ルビーの手元から迷いが消え去った。

ルビーは背中に感じるトパーズのぬくもりと魔力を力に変え、スッと美しい軌道で彫刻刀を滑らせていった――。

その流れるような作業を桃と蒼は目を奪われていた。

オルゴールの裏面にしっかりと名前が刻まれた。

ートパーズ.ルビー.サファイア.桃.蒼ー




やっとディスクオルゴール出来上がりました。

私自身実際にオルゴールの演奏に感動したことがあります。

この5人にも同じようにオルゴールの音色に感動してもらえたらと思い素人ながら書かせていただきました。


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