泣き虫
「あっ!インペリアルさまだ!」「っ…御機嫌よう、インペリアル、様では……」勝手にインペリアル様に気安く近づいてはなりません…
「インペリアル様本日もお綺麗ですこと!」「今日の魔法も完璧ですわ流石です!…ですから…」「「「いつか私たちを高官として置いてくださいね!」」」
わたしの人生ってなんなの
「っ!? トパーズ……!?」
廊下に飛び出したものの、トパーズの姿はすでにどこにもなかった。
きっと魔法で移動したんだ。――行き先は、ひとつしかない!
絶対、絶対に間に合わせる……!!
――禁書庫内。
コツコツと、静寂にトパーズの足音が虚しく響く。
「……ここね」
ここ数日、狂ったように読み漁った膨大な禁書。歴史、日誌、観察記録……そして、禁忌とされる呪詛や攻撃の魔法。
――うちをあんな風に踏みにじって、裏で笑ってたあいつら一族郎党……一人残らず地獄に引きずり下ろしてやる。
本を取り出す手に、迷いはなかった。
どのページのどこに何が書き記されているか、すでにすべて頭に刻み込まれている。
立ち止まることなく、ポツリポツリと禁忌の詠唱を始める。
【思いは魔力を超えるんだよ!】
こんな時に脳裏をよぎったのは、遠い友の記憶だった。
「そうね、ローズ……わたしには稀代の才能なんてないよ。でも……この反吐が出るほどの憎悪と怨念さえあれば……ふふっ、やられたまま終わるなんて、絶対に嫌だもん、ふふ、綺麗な月だね」
バンッ!!!!
「トパーズ!!!!!」
禁書庫の扉が激しく吹き飛び、桃が飛び込んできた。
トパーズの周囲には、肌を刺すような禍々しい魔力が渦を巻いている。魔力を持たない桃にすら、ゾクッとするような不気味な圧迫感が襲いかかった。
「!? 桃……!? どうしてここが……!?」
「蒼だよ! 『自分がトパーズの立場ならここに行く』って!! ……でも、わかってたのに止められなかった……ごめんね!!」
桃は必死に手を伸ばすが、吹き荒れる魔力の渦に阻まれ、なかなか前へ進めない。
「桃……来ないでよっ…! わたし、もう抑えられないの……! うちのことも、お父様のこともあんな風に踏みにじって……裏でほくそ笑んでたあいつら一族郎党……全員同じ目に遭わせて、地べたに引きずり下ろしてやりたい……! やられたらやり返す、それが人間でしょ!? 綺麗事なんてどうでもいい……あいつらの全部、この手でぶち壊してやりたいんだよ……っ!!」
「関係ない……っ!! んぐ……っ」
バサバサと狂ったように舞い散る本。足元をすくわれそうになりながらも、桃は一歩、また一歩と前へ踏み出していく。
「嫌……ダメ、来ないで!!」
「それこそ嫌だ……!!! やり返したい気持ちも、悔しい気持ちも全部わかるよ!! でも、そんなことのためにトパーズが手を汚す必要なんてない!! 私の知ってるトパーズは、泣き虫で、カマトトぶって、友達が大好きで、いっつもカッコつけてるだけの……ただの同い年の女の子だよ!!!」
わかっててそんな暗い道に行かせるか……行かせてたまるか……!!!
ゴッ!!
宙を舞う重い厚表紙の本が、桃の額を容赦なく直撃した。
だらりと赤い血が頬を伝い落ちる。
「……っ! いやっ……桃!!」
ぎゅっ…………。
トパーズの悲鳴と同時に、桃は魔力の渦を無能力で押し切って、トパーズの身体を強く抱きしめた。
バサバサバサバサッ……!
宙を舞っていた幾重もの本が床へ落ち、歪んだ魔力が潮が引くように消えていく。
血を流しながら、桃はトパーズの顔を覗き込んでへへっと笑った。
「ほら……泣き虫トパーズだ」
悲しいお知らせですが闇落ち編打ち切りです、次回のトパーズ様にご期待ください。
闇落ち復活RTA狙います。




