最低な朝
「……ん、朝ですの………昨日は確か…蒼に託して…」
「あっ?起きたんだマスター様?」
目の前にジノ人形が覗き込んでくる。
「はっ!?人形、お前……!?昨日よりさらに最低な朝ですわ……」
こんなやつの顔など見たくないと思いうつむく。
「魔力切れるまで夜な夜な探し物?なんでそこまで頑張るの?頑張ったって世の中何か良くなるわけでも無いのに?」
「お前には関係ありません…」
「…はぁ〜〜あるんだなぁそれが、このままじゃ魔力供給出来ないよ〜?今日?」
「っ!?」
「あれれ〜今、魔力切れだって僕言ったよね?それも聞いてなかったなんてはぁ…自分の作った人形にすら魔力入れられないってどうすんの?ん?」
ジノ人形がうつむいたトパーズの顔を見上げる。
――ばん!!!
勢いよくドアが開く。
「トパーズ!!!!!!無理したの!?!?ダメだって言ったじゃない!!!」
飛び込んできた桃は、ボロボロと大きな涙をこぼしながらトパーズの元へ駆け寄る。
「あ、魔力ちょっと回復するね〜?この無能力くん見て。まぁまだ足りないから夜までに僕に入れられるくらいまで回復頑張りなよ。じゃ、クラフト大会も大盛り上がりで怪我人も続出してるからね、じゃっ見回りしてくるわ」
ジノ人形はひらひらと手を振り、部屋を出て行った。
ドアが閉まり、静まり返った室内。
桃は脱力してベッドに横たわるトパーズの青ざめた手を、両手でぎゅっと握りしめた。
「もう……! 無茶しすぎだってばトパーズ……! 蒼から聞いたよ、昨日倒れるまで禁書庫にいたんでしょ!? 私、すごく心配したんだから……っ!」
「……ごめんなさい、桃。でも……どうしても、確かめなきゃいけない気がして……」
トパーズは申し訳なさそうに眉を下げ、弱々しく微笑む。
コンコンとドアを叩く音。
「トパーズ、入るよ」
蒼がすでに桃が開けていた医務室の扉をノックして入ってきた。
「すまない、本当は医務室になんて連れて来たく無かったんだが、女子寮に向かったら寮母さんが顔を真っ青にして『魔力切れてるわ!急いで医務室へ』って言うもんだから」
「…いえ、ありがとうございます蒼、ところで昨日の資料は??」
トパーズはベッドの上で体を起こそうとしながら、急いたように問いかける。だが、蒼は質問にはすぐ答えず、静かに眼鏡の位置を直した。
「先に質問に答えてもらう、魔力はどうやったら回復が早い」
「え?」
「今ジノが言っていたよな?桃を見て回復したと、つまり心の問題もあるのか?」
「ええそうですわ、体と心の休息が1番です」
「じゃあどこに行けば1番回復する?」
「そんな事より昨日の成果です!!あったのでしょう??」
焦りを見せるトパーズの言葉を、強い声が遮った。
「だめ!!!」
桃が必死な顔で立ち塞がり、その目には大きな涙を蓄えている。
「も、桃!????」
「先に休んで!それからじゃなきゃ教えない!!」
涙をぽろぽろとこぼしながら怒る桃の迫力に、トパーズは思わず息を呑み、言葉を失った。
「…っ…そうですわね。無理はいけませんわ」
トパーズは少し困ったように目を細めると、ぽつりと本音を漏らした。
「ルビーと蒼の部屋で…4人でオルゴール作りをしたいですわ…」
殺風景で冷たい医務室ではなく、大切な仲間たちが集まるあの温かい部屋で、穏やかな時間を過ごしたい――それが、今のトパーズの心からの願いだった。
その言葉を聞いた桃と蒼は、顔を見合わせた。
「……分かった。それなら、すぐに部屋へ移動しよう。静かで安心できる場所の方が、心も体も休まるはずだ」
蒼はトパーズを優しくサポートしながら起こし、桃も涙を拭いながら嬉しそうに頷いた。
「うん!みんなでオルゴール作ろう!ルビーも待ってるよ!」
殺風景な医務室から、いつもみんなが集まるルビーと蒼の部屋へ。
やっ…ぱジノよ




