ひつようなもの
男が実家に久しぶりに帰ると、年老いた父親の部屋に大きな機械が置いてあった。
あの機械はなにか? と男が尋ねると、父親は、必要なものだ、そう答えた。
男は疑問に思い、何のための機械なのか父親に再度質問する。
すると、父親は少し悩み、幸せになるために必要なものだ、と自信満々に答えた。
男は怪しく思い、その機械をよく見る。
ストーブよりも大きく、ブルブルと音を立てている。
よくわからない数字が正面のディスプレイに表示されている。
機械の横に大きく電話番号が書かれていたので、男はその番号に電話をかけてみる。
長々と、小一時間説明されて分かったことは、この機械は幸運を作る機械ということだけだ。
男からすればわけがわからない。
返却できないのか、と男が電話口で聞くと、それを聞いた父親が騒ぎ始めた。
年老いた父親に、親不孝者と罵られたりもした。
それが電話口にも聞こえたのか鼻で笑うような声が聞こえ、もう代金はいただいているし、返却期限も過ぎてしまったので、と言われてしまう。
男は、父親が完全に詐欺に引っかかってしまったと確信した。
そう確信した。
埒が明かないので電話を切り、罵ってくる父親をなだめる。
そこに母親も話に入ってくる。
はじめは母親も詐欺だと考えていた。
だが、その機械を置いてからというもの、小さな幸運が舞い込むようになったのだという。
それにそこまで高いものじゃないという話だ。
高くないと、聞いて男も一安心する。
だが、間違いなく詐欺だ。
どうにか返品できないものだろうかと、男は考えた。
そのためには両親を説得しなければならない。
男はとりあえず両親の話を聞こうと考える。
例えば、どういう風に幸運なのかと。
父親は怒っていたが、母親は落ち着いた感じで、スマホのゲームあるでしょう? ガチャがあるやつ、あれをこの機械の前でやってみなさい、とそう言われた。
男も物は試しと、それに従った。
男は再び機械の横の電話番号に電話した。
そしていうのだ。
自分にもこの機械を売ってくれと。
電話口の者は、嬉しそうにありがとうございます、と言ってきた。
その機械が男の家にも届く。
男の妻は男のことを、馬鹿だと怒ったが、男が機械の前でスマホのゲームのガチャを引く。
その結果に妻も目を丸くした。
男は妻に言う。
これは必要なものなのだと。
ひつようなもの【完】




