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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ゆめ

 女は休日に椅子の上で座りながら、うたた寝していた。

 浅く覚醒しては、浅い睡眠に入る。

 そんなことを繰り返していた。


 朦朧とした意識の中、心地よい時間を過ごしていた。


 そんな時、女の部屋のドアをコンコンとノックする音が聞こえてくる。

 朦朧とする中、女は返事をして、ドアのところまで行きドアを開ける。

 そして、気づくのだ。


 自分は一人暮らしだったと。


 だが、部屋のドアはもう開けてしまった。

 ハッ、としたとき、女は椅子の上で目が覚める。

 ドアをノックされたのは夢だったのだ。


 安堵のため息をつき、今は何時か確認しようとした時だ。

 部屋のドアをコンコンとノックされる。


 確かに部屋の外に誰かがいる。

 女は恐る恐る立ち上がり、忍び足でドアのところまで行く。

 そして、ドアを閉じたままドアの向こう側の気配を探る。


 すると、誰かの息遣いが聞こえてくる。

 誰かがドアの前にいることは確実だ。


 女はドアから離れ、警察に助けを呼ぶためにスマホを取りに行こうとした時だ。

 ガチャリと音がしてドアが開かれる。

 女が焦りながら振り返ると、そこには……


 ハッ、と目が覚める。

 椅子の上で女が目覚める。

 今度は急いでスマホを手に取る。

 時刻は、午後三時半過ぎだった。


 そして、女はじっと部屋のドアの方を見つめる。

 すると、コンコンとドアがノックされる。


 これで三度目だ。

 女は音を立てずベランダの扉を開け、そのままベランダの隅に隠れる。


 しばらくするとガチャリとドアが開かれる音が聞こえてくる。

 少し間をおいてから、女の母親の声で、〇〇はいないの? と何度も女の名前を繰り返し呼びかける声が聞こえてくる。


 女は背筋をゾッとさせる。

 母親は女のことをあだ名で呼び、○○と名前では呼ばないのだ。

 すぐに声の主が母親ではないとわかった女は、ベランダの隅で息を殺して隠れる。


 しばらくすると女を呼ぶ声が変化していく。間延びした声になり、スローモーションで再生されるような声に変化していき、しまいには何を言っているかもわからない人間では発声できないような言葉になる。

 そして、その声は少しずつ遠ざかって行った。


 声が完全に聞こえなくなってから、女が自分の部屋を覗くと、そこには誰もいなかった。


 それから女は自分の部屋のドアにも鍵がかかるようにし、悪夢を食べるという獏のお守りも身に着けるようにした。

 ただ、そのお守りはそれほど効果がないのか、部屋で寝ているとよくドアをノックされる。


 取り付けた鍵の方は役に立っているのか、ドアの外にいる何かは部屋に入ってくることは今のところない。

 たまにだが、部屋で寝ているとドアの外から、家族や友人の声で、入れて入れて入れて、と、声をかけられることもある。


 問題は、女が住んでいる部屋は賃貸ではなく購入した部屋であり、そう易々と引っ越せないということだ。

 今のところ、部屋のドアに鍵をかけるしか対策はなく、女は睡眠不足で悩んでいるという。






ゆめ【完】

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