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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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びんづめ

 女がスーパーで買い物していると、瓶詰めの漬物が置いてあった。

 ピクルスというやつだ。

 瓶の中にはしわしわになった野菜がたくさん入っている。

 そんな瓶が棚一面に置かれている。


 女は買うつもりはなかったが、少し珍しく思ったので野菜の瓶詰めを見て回る。

 特にこれと言って気を引くものはなかった。

 まあ、なんとなく、というやつだろう。


 でも、もしかすると、この時点で何かを感じていたのかもしれないが。


 瓶と瓶の間、そこから見える瓶。

 そこで視線が合う。

 合うはずのない視線が合う。


 瓶の中に野菜に紛れて、目がある。

 いや、目だけではない。

 顔だ。

 顔が瓶の中にあったのだ。


 女は最初、驚きこそしたが、それが棚の向こうでこちらを覗き込んでいる人がいるのだとそう思った。

 瓶の中ではなく瓶の向こう側の顔なのだとそう思った。

 そうでなければおかしい。

 おかしいのだが、実際は棚の背面には板があり、棚の向こう側を見ることはできない。

 そこに顔があること自体がおかしい。


 瓶の中の顔がにやりと笑う。

 それと同時にその顔の口から、泡が零れ、瓶の上部へと上がっていく。


 それで女は瓶の中に顔があるのだと、理解できた。

 だが、女はそれでパニックを起こすこともなかった。


 ただ冷静にその瓶の中の顔を観察した。

 彫りが深く外国人の顔つきだ。

 色のついた瓶だったので正確な肌色はわからない。

 透き通った緑色の瓶だったので、少しゾンビのようにも見える。


 さすがに女もそれを手に取ろうとは思わない。

 だが、女は無表情でその瓶を見続けた。

 すると、瓶の中の顔の方が気まずかったのか、嫌な顔をする。

 騒ぐわけでもなく怖がるわけでもなく、その女は無表情でただただ見てくるのだ。

 瓶詰めにされた顔としてもなにか気まずかったのかもしれない。


 五分ほどだろうか、女は何事もなかったようにその場を後にした。


 家に帰った女は、家中の瓶を集め、煮沸消毒し始める。

 あの瓶を自分で再現しようと考えたのだ。





びんづめ【完】

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