ゆき
もう五月にもなろうという時期なのに雪が降る。
寒くはない。
ちょうどよい気候なのに、雪が降っているのだ。
元々それほど雪が降るような場所でもないのに、季節外れの雪が降っている。
女は最初、白い花の花びらが宙に舞っているのではないか。
そう考えた。
だが、掌に落ちてきた雪は、女の肌の体温ですぐに溶けた。
それで、それが雪なのだと理解できた。
なぜこんな陽気で雪が? という新しい疑問が生まれたが。
とにかく雪が降っている。
女は空を見上げる。
気持ちの良い晴れだ。
雲一つない、と言ってしまうとさすがに嘘になる。
空に雲が少しだけあるが、雪どころか雨が降るような雲もない。
そして、春の陽気なのだ。
普通に考えれば、雪が降るわけはない。
では、この白く空から舞い落ちてくるものは何なのか。
雪だ。
女の持つ常識では、これは雪だ。
局地的な異常気象なのだろうと、女が思って、その様子をスマホで撮影しようと、動画を撮ろうとスマホを空に向けた時だ。
女は画面に映ったものを見て固まる。
何が写っていたのかって?
それは何度聞いても教えてもらえなかった。
ただ、超常的な何かがスマホの画面に映っていたということだ。
目には見えなかったが、スマホの画面にはそれを捉えてしまっていたのだ。
女は録画ボタンを押さなくて良かったと、今になっても言い続けている。
もし録画してしまっていたら、自分がどうなっていたかわからないと。
結局、何が写っていたのか、その詳細を女は一言も語ってくれなかった。
ただ、映っていたのは、見てはいけないものが、映り込んでしまっていたと、目の下にクマを作りながら、そう言ったのだ。
眠れない日々が今も続いているらしい。
ゆき【完】




