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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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くろいわんぴーす

 男が夜遅くに酔いながらも自宅へ帰る途中のことだ。

 まだ遠くだが、前方から黒いワンピースを着た女性が歩いてくるのが見えた。


 もう真夜中だというのに女性の一人歩きは危ない。

 そう思いつつも男は行動を起こさない。

 酔っているとはいえ、いや、酔っていると自覚しているからこそ、迷惑だろうと理性が働いていたからだ。

 酔っていなくとも男は夜道で女性に話しかけるような人間ではなかったが。


 まあ、そんなことはどうでもいいことだ。

 髪が長い女性だった。

 ワンピースから出ている手足と顔が、夜のせいかとても青白く印象的だった。

 照らしている街灯も、どこか白色でそう見えていたのかもしれない。


 だが、その黒いワンピースの女性が近づくにつれておかしいことに男も気づく。

 まず裸足だ。

 しかも俯いていて女性の顔も見えない。

 何より、ワンピースの輪郭がはっきりせず、向こう側が透けているように思えたのだ。


 距離があった時はその違和感に気づけなかったが、距離が近づいて分かったのだ。


 そして、すれ違う数メートル前で男もやっと気づく。

 その女性はワンピースなど着ていないことに。


 黒いワンピースだと思っていた服はそもそも存在していなかったのだ。

 ただ女性の長い髪の毛がワンピースに見えていただけだったのだ。


 その女性は頭部、二の腕から先の両手、膝から先の両足。

 それしか存在していなかった。


 いわゆる胴と呼ばれるものが存在しない。

 頭部と四肢だけの存在だったのだ。

 なのに、まるで胴もあるかのように動いているのだ。


 そのことに気づいてしまった男は、道の途中で止まり、震え上がる。

 恐怖のあまり頭の中がぐちゃぐちゃになり、何も考えられない。


 頭部と手足しかない女性が男のことを無視し、通り過ぎていく。

 だが、すれ違った直後に女性は立ち止まり、男に向かって聞くのだ。


 ワタシガミエテイマスカ?


 と。

 男はとっさに胴体が、だが、見えない! と叫んでしまった。


 その女性はニヤリと男に笑いかけ、そして、何事もなく歩いて行った。

 男はしばらくその場にとどまり混乱していたが、混乱が収まると叫び声をあげながら家に逃げ帰った。


 それ以来、男がその女性に再び会うことはない。

 会うことはなかったのだが、なぜか時折、両方の二の腕と膝の上の辺り、そして、首が痛むのだ。

 まるでのこぎりで切られているかのように、激しく痛むようになった。


 病院にも行ったが異常はないとのことだ。

 それでも痛みだけは収まらない。






くろいわんぴーす【完】

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