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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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へび

 男は散歩がてら山道を歩いていた。

 山道と言っても、それほど山深い場所ではない。

 少しだけ自然に浸れる、そんな場所だ。

 それでも人工物は周囲にはなく、道も砂利道で舗装されていなくて自然を感じられる。


 そんな道を歩いていた。


 すると、道の真ん中に奇妙なものを見つける。

 最初は節くれだった大きな瘤のある木の枝に見えた。


 だが、ある程度近づくと、それが蛇だと男は気づく。

 何か捕食したのか、体の一部がまん丸くなるほど膨れ上がっている。

 蛇も苦しいのか時折もがくように地べたを力なくのたうち回っていた。


 何かボールのような物を飲み込んでしまったのか、と男は思った。

 ただ蛇を助けようにも、どうしたらいいかわからないし、この蛇が毒蛇で噛まれでもしたら大変だ。

 男は少し離れた場所からその様子を観察することしかできない。


 興味深いように男がその蛇を観察していると、その蛇はどこか異様だ。

 まん丸だったふくらみはいつしか楕円状に変形し、蛇の体に沿って膨張している。


 蛇は苦しむように口を大きく開き、尻尾をばたつかせる。


 そのふくらみは、どんどん蛇の体に沿って大きくなり、いつしか蛇の口まで届く。

 そして、大きく開け放たれた蛇の口から、毛むくじゃらの手が伸び出た。


 猿かと男は思った。

 だが次に出てきた頭部は、猿のものではなく、人間に見えた。


 だが、それが人間なわけはない。

 人間が中に入れる程の大蛇ではないし、元はサッカーボールより一回りか二回り小さい膨らみでしかなかったのだ。


 けれども、蛇の口から出てきたそれは毛むくじゃらではあったが、猿には見えず人に見えたのだ。


 男は怖くなり、その場から走って逃げ出す。

 しばらくして、まるでこだまのように、響き渡る声で後から、おーい、おーい、と呼ぶ声が聞こえてきた。

 男は振り返りもせずに一目散に山道を駆け下りた。


 あれが何だったのか、男にはわからない。


 だが、稀に夢を見るのだ。

 あの猿のような毛むくじゃらの存在に山に呼ばれる夢を。


 男はすぐに田舎から引っ越し、都会へと移り住んだ。

 そして、生涯山には近づかないと誓っている。

 次にあれに遭遇したら、きっと山から帰れなくなる、そう思えて仕方がなかったからだ。








へび【完】

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