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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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どろどろ

 男が夜、帰宅途中に異様なものを見る。

 確かに男の住んでいる場所は田舎だ。

 山に囲まれ、畑や田んぼばかりが周りは畑や田んぼばかりだ。

 最寄駅からも、かなり歩かなければならないような場所だ。


 野生動物なら、温かい時期になれば割と出会う。

 さすがに熊は見ない。

 男が住んでいる場所はそんな感じの田舎だ。


 その日も狸か何か、そんな野生動物が出たと男は思っていた。

 ただ、狸にしては随分と大きい。

 猪かもしれない。

 男は緊張し始める。

 だが、それは猪にしたら動きが鈍い。


 まるで何かが這いつくばるかのように地面を移動しているのだ。

 もしかしたら人が怪我して這いずっているのかもしれない。

 男はそう思い駆け寄る。


 近づく途中で男は異臭に気づく。

 ものすごい臭いだ。

 腐敗臭とも少し違うが、あまりいい臭いではない。

 ただむせ返るような臭いで吐きそうにはなる。


 ある程度近づいたところで、男はそれが人間ではないと分かる。

 暗く電柱もなかったが、それは人の形をしていなかった。


 それはぶよぶよと動く塊だった。

 暗くて正確な色はわからない。

 けれども、全体的に赤茶色い、そんな色をしているように思えた。

 巨大なナメクジに見えた。

 どろどろの泥の山が動いているようにも見えた。

 表面をぬらぬらと粘液が覆い、伸び縮みするようにそれは動いていた。

 しかも、それは子供ほどの、少なくとも猪と見間違えるほどの大きさがあったのだ。


 それを目の当たりにした男は来た道を走って引き返す。

 なんだかよくわからない、奇妙なものを見てしまったと。


 その日、男は道を変え、かなり遠回りして自宅まで帰った。


 それからしばらくして、男は町内会に参加する機会があり、町の老人たちと話すことがあった。

 その時に、男はあの大きなナメクジのような存在のことを思い出し、老人たちに聞いてみた。

 すると、老人たちは口をそろえて言うのだ。


 ここは十年ちょっと前に再開発されたばかりの土地で誰も彼も引っ越して来たばっかりで知るわけがない、と。


 それを聞いた男も納得せざるを得ない。

 結局、あのナメクジのようなものの正体は分からずじまいだ。







どろどろ【完】

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