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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ねじれまわる

 女が帰宅途中、トンネルで奇妙なものを見つけた。

 それはトンネルの天井から垂れ下がっていた。

 てるてる坊主のようにぶら下がっていた。


 トンネル内は暗くそれは影になっていた。


 だから、女はそれが首吊り死体だと思ってしまう。

 あるいはそうだったのかもしれない。


 それは子供ほどの大きさだった。

 てるてる坊主のように丸い頭部でワンピースか袖の長いカッパを着たような出で立ちだった。


 それでも女が悲鳴をあげることはない。

 いや、出したくても声が出なかったのだ。

 体がまるで動かない。

 それを一目見た時から、逃げることもできなくなっていた。


 金縛りというやつだ。


 女はトンネルの入り口に立ち、ブルブルと身を震わせながら、ぶら下がっている者を見る。

 それから目をそらすこともできない。

 丸く影になっているはずのそれは、ちゃんと人の顔があり、女を凝視していた。


 黒一辺倒で瞳のない目、蛇の頭のような鼻、笑みを浮かべる口、白く丸い輪郭。


 どれも人間の顔に見えるのに、どこか違和感がある。

 だが、一番非人間的なのはそこではない。


 ぶら下がっている胴が、女の目の前でゆっくりと回りはじめたのだ。

 顔は女の方を向いたままなのに、胴が一回転、二回転と人間ではありえないほど回っていく。

 まるでそういうおもちゃのように、それは回りねじれ始めたのだ。


 動けない女はその様子を見ているだけだ。

 しまいには水を絞った雑巾のようにねじれ、体液か血か、何か液体を滴らせ始める。

 それでもそれはねじれていくのをやめない。


 ビチャビチャと音を立てて、液体が絞りだされる。

 すべてが絞り終わるとそれはトンネルの天井へと上がっていき、姿を消した。

 その時点でやっと女は金縛りから解放され、トンネルの前から逃げ出すことができた。


 その夜、女は夢を見る。

 自分が寝ているベッドの上からあれが垂れ下がって来て、ねじれ始めるのだ。

 そして、女の顔に向けて血や体液などを絞り出してくるのだ。


 絶叫と共に、女が目覚めると寝汗はかいていたものの、何か液体を掛けられた様子はない。

 ないのだが、なぜか血生臭い鉄の臭いだけが、部屋の中に漂っていた。


 女はもう自分はダメだと、あの存在に憑かれてしまったのだと。

 自分もいずれ雑巾のように絞られてしまうのだと、その時になんとなく悟った






ねじれまわる【完】

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