おちば
男が庭にいると落ち葉が一枚降ってきた。
茶色く変色した乾いた落ち葉だ。
それを拾い男は上を見上げる。
そこで男は違和感を感じた。
確かに男がいる場所は庭だが、その庭には木がないからだ。
芝生はあるが管理が面倒で、だいぶ昔に庭の木をすべて切ってしまったのだ。
それでも、風に乗ってどっかから落ち葉が飛んできたのだろう。
男はそう思って落ち葉を見る。
何の変哲もない落ち葉だ。
カラカラに乾いているところを見ると、落ち葉になってからかなりの時間がたっているのかもしれない。
ただ、茶葉のように少しいい香りがする。
落ち葉の付け根の部分を持ち、指で捻り、落ち葉をくるくるとまわしてみる。
すると周囲に良い香りが漂い始める。
少しの間、男は無心でその落ち葉を指と使いくるくると回し、その香りを楽しむ。
そうしていると、不意に声をかけられる。
あら、すいません、どうも落としてしまったようで。
と。
男が声をかけられた方を向くと、奇妙な人物が立っていた。
お腹が出るほど太っていて、福笑いの完成した顔のようなお面を被っている。
また大きな袋を肩にかけている。
お面を被っているから性別はわからないが、声の感じからして中年の男性のように感じられた。
そんな人物が自分の家の庭の中に立っていたのだ。
男は言われた言葉を考える。
何かを落としたということだ。
思いつくのは、今手に持っている落ち葉くらいのものだ。
もしかして、この落ち葉のことですか? と、男が聞くと、お面を被った人物はゆっくりと頷き、袋を担いでいる反対の手を差し出してきた。
何で自分の庭に入ってきているのか、それは気になるところだが、男は素直に持っていた枯葉をお面の男に手渡す。
するとお面の男は大事そうに落ち葉を受け取ると、男に向かい軽くお辞儀をする。
つられて男もお辞儀をして、顔をあげた時、お面の男は既に消えていた。
男は何だったんだろう、そう思っていたが、男の家の縁側に真っ赤に熟した柿が三個ほど置かれていた。
あの落ち葉はなにか大切な物で、それのお礼だったのだろう。
そう思って、その柿を男は食べた。
大変甘い柿だったが、男はひどく腹を下し三日ほど寝込むことになった。
おちば【完】




