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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ねこ

 少女が小学校から帰る途中に猫と出会う。

 全身真っ黒な黒猫だ。

 目だけが黄色い。


 少女も始めは、影の中に黄色い宝石が二つ浮いている、そう錯覚する程真っ黒な猫だ。


 その猫はブロック塀でできた影の中にちょこんと座り込んでいる。

 少女が駆け寄っても動きもしないし、鳴きもしない。


 あまりにも動かないので、実は人形じゃないかと少女が猫に触れるとちゃんとぬくもりがあり、撫でたら黒猫は気持ちよさそうにその宝石のような目を細めた。

 猫を一通り撫でた後、少女は黒猫に何かあげられるような食べ物はないかと、自身の荷物を探るが、そんなものは持っていなかった。


 少女は黒猫に別れを告げて、再び帰路に就く。

 撫でられた黒猫はしなやかに立ち上がり少女の後についていく。

 少女もついてくる黒猫に気づき、ゆっくりと黒猫を見ながら歩く。


 けれど、道が十字路にあたりブロック塀が、それが作る影が途切れたところで、黒猫は立ち止まる。

 まるで影から出るのが嫌だと言っているかのようだ。


 少女はついてきていた黒猫が立ち止まったことを少しだけ残念に思い黒猫に振り返り、手を振ってから前方を向く。


 そして、唖然とする。

 それは真っ黒な影、いや、闇だった。

 人型をした黒い塊だった。

 腐敗臭とも違う嫌な臭いを漂わせた、人型をした黒い闇だった。


 少女は恐怖よりも理解できない存在に呆然と立ち尽くしてしまう。


 逃げることも思いつかない少女に黒い塊が手を伸ばす。

 少女にその手が触れようとした瞬間、甲高い鳴き声が背後から聞こえてくる。

 後をついてきた黒猫だ。

 黒猫が闇を威嚇するように鋭く鳴き声を上げる。


 そうすると人型をした黒い塊は少女から離れ、空間に溶けるように消えていった。


 そこでやっと少女に恐怖がやってくる。

 少女は助けてくれた猫を抱き上げて、わんわんと泣いた。


 少女が落ち着いた後、猫はするりと少女の腕から抜け出して、少女に向かい確かに、人の言葉で言ったのだ。


 助けてやったんだから、死んだらおまえの死体は喰わせろ。


 と。

 確かに黒猫はそう言ったのだ。

 そしてその黒猫はニヤリと笑い、影の中へと消えていった。






ねこ【完】

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