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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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いけのぬし

 少女が使う通学路というわけではないが、学校に通うときの道に公園を通る時がある。

 公園を通ったほうが近道になるからだ。

 小さな公園ではなく、かなり大きな公園で、公園内に大きな池があるような、そんな公園だ。

 だから、その公園を避けて通ると遠回りになってしまう。


 少女も普段は日が落ち、暗くなってからは公園を通ることはない。

 ちゃんと人通りが多い大通りを使い帰るのだが、その日は急いで帰宅しなければならなくて、日が落ちてからもその公園を通って帰宅していた。


 少女が小走りに公園内を横切る。

 公園の中央にある池のほとりにある道を小走りに走る。


 公園内にも街灯はあり、暗いことはないのだが、公園の池は大きい。

 池のほうは真っ暗だ。

 向こう岸が見えないほど大きくもないのだが、池の中央のあたりは闇に包まれている。


 理由はないが、そんな闇が少女にはとても不気味に思えた。


 不気味なだけに、少女も意識は池の方へとどうしても行ってしまう。

 怖いと思っていても、警戒心から池の方を、その光の届かない中心に目が行ってしまうのだ。


 そんな時それは唐突に浮き上がった。


 それは水中に沈んでいた浮き輪が一気に水面に浮きあがるように、水底から浮き上がってきた。

 天辺も丸い円柱とでもいうのか。

 全身が真っ黒で、手も足もない。

 真っ黒い円柱に、二つのまん丸い目、その下に大きな口がある何か。


 それが、ジャバジャバジャバと水音を立てて浮き上がってきたのだ。


 池の中央を見ていた少女はそれと目が合う。

 少女は見てはいけないものを見てしまったと、本能で直感する。


 池の中心に湧き上がってきたそれは水面を掻き分けて、その身をくねらせながら少女の方へと寄ってくる。


 少女は全身をガクガクと震わせながらも駆け出し、池からなんとか離れる。

 公園の入口まで走り、そこで息を切らし、一旦池の方を少女が振り返ると、池のほとりにたたずむ存在が少女の方をじっと見つめていた。


 あの存在は池からは上がれないのだと、少女は分かり、ひとまずは安心し、それでも急いでその場から家へと逃げ帰った。


 家に帰った後、少女は両親にそのことを話すのだが、両親は信じてくれなかった。

 それでも、池の主に違いないと、少女は考え、それ以降少女はその公園に近寄ることはしなくなった。


 だが、池の主を見てしまってから、大雨が降ると少女の部屋の窓のすぐ外に大きな水たまりが、まるで何かがたたずんでいたかような、そんな水たまりが、必ずできるようになった。






いけのぬし【完】

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