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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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うしろまえ

 男が夜遅くに道を歩いていると、前方を女性が歩いていた。

 とても髪の長く黒髪が美しい女性だった。

 しかも、男が進んでいる道は長い一本道で緩い坂道だった。

 男は少し気まずい。

 その気はなくとも女性をつけていると思われてしまうかも、と考えてだ。


 なら、いっそのこと、前を歩く女性を抜かしてしまえばいい。

 男はそう思って、大股でしかも足早で歩き、その女性を追い抜こうとする。

 すると、前方を歩いていた女性も足を速め、小走りになり、追い抜くことはできない。


 男は逆に怖がらせてしまったかな、そう思い、今度はゆっくり歩く。

 すると、なぜか男の前を歩く女性も、ゆっくりと歩き出す。


 男はからかわれているのか、そう思い、自動販売機の前で立ち止まり、そこで飲み物を買い、すぐに飲み物を飲み始める。

 さすがに、これでいなくなるはずだと。


 ゆっくりと暖かい飲み物を飲み終えた後、空き缶をゴミ箱に入れ、歩き出して男は驚く。

 少し歩いた先に、あの女性が立ち止まっていたのだ。


 相変わらずの長い髪の後ろ姿だ。


 そこで男も疑念が生まれ、少し怖くなってくる。

 女の意図が分からない。

 男が近づこうとすると、女も歩き出し、男が足を止めると女も足を止める。

 どういうわけか男から一定の距離を保ちたいように思えた。


 男は逆にこの道を戻ったらどうなるのか。

 そんなことを考えるが、実行する気にはなれない。

 家に帰るのには、結局、この長い坂道を登らないといけないからだ。

 しかも、もう中腹くらいまで進んで来てしまっている。

 今更、多少気味が悪いからと引き返すのは馬鹿らしい。


 男はこのまま坂をのぼりきってしまおうと考える。

 ちょうど坂を登り切ったところにはコンビニもある。

 そこに入ってしまえばいい、そう考えていた。


 なので、男はガンガンと歩き、坂を上る。

 そして、坂を上り切った。


 目の前にはコンビニ。

 だが、コンビニに行くには横断歩道があり、横断歩道の白線の前にあの女が立っている。


 信号機は青色だ。


 横断歩道を渡れるはずなのに、女は横断歩道の前に立っているのだ。

 男はそこはかとない恐怖を女から感じる。

 その女の横を通り過ぎ、コンビニへと男は駆けこむ。

 明るいコンビニの店内で一息ついてから振り返る。


 あの女は未だに横断歩道の前から動いていない。

 だが、振り返って男は初めて気づく。


 今も後ろ姿だと。


 何かを理解したわけではない。

 ただ、男は女の後ろ姿しか見てなかった、そのことを理解した途端だ。

 男の全身をどうしようもない悪寒が走る。

 全身がガクガクと震え、その場に座り込んでしまう。


 コンビニの店員が男を心配して声をかけるのだが、男は震えすぎてまともに答えることができない。

 ただただ、後ろ姿の女の姿を見続けた。

 いや、恐怖で女の後ろ姿から目が離せなくなっていた。


 そして、女は笑ったのだ。

 後ろ姿にも関わらず。

 長い髪の合間から、笑う口が、確かに見えたのだ。

 それを見た男はそのまま気を失ってしまう。

 

 それで男に何が起きたわけではない。

 一時的に気を失いはしたものの、すぐに目覚め、コンビニの店員に平謝りして、自力で家に帰った。

 男が目覚めた時には、あの女はもういなくなっていた。


 男は、得体のしれない後ろ前の女を見た、と酒を飲むと何故だか話すようになった。


 なぜあの時、あの女があんなにも怖かったのか、男にも理解できないそうだ。

 ただ、その時は、その女が怖くて怖くて仕方がなかったのだとか。


 その話を聞いた者もまた……





うしろまえ【完】

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