↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影女といく異世界紀行  作者: ケイン島谷
死亡・天恵・転移
4/34

004.初めての戦闘、初めての召喚

R-15に抵触するのでしょうか

 跳びかかるバガントをゆっくりと避ける。

 別に余裕があるわけじゃない。思考速度に対して体が動くのが遅いのだ。

 避けなければいけないと頭が警報を鳴らしているのに、伝達までに時間がかかる。

 包丁を落としてやばいと思うのに足が動かないってあるだろ? あんな感じだ。


 二の腕にかかる布をわずかに裂いてバガントと交錯する。いや、少し肉に入ったらしい。赤い筋が三本入っている。痛みはさほどないのはアドレナリンのおかげだろうか。

 ああ、くそっ、思考は冷静なのにもたつく体が本当嫌だ。それともステータスの差だろうか。敏捷差は3倍である。正直そこまで違うのかと疑問もあるのだが。

 できれば武器が欲しいが、ここはただの森だ。せいぜい木の棒か投てき用の石ぐらいが関の山か。辺りにさっと視線をやるが、手ごろな棒はなさそうだ。細い枝しか落ちていない。

 バガントが旋回し、再度こちらに向き直った。姿勢を低くして唸っていたが、間を置かずもう一度俺に跳びかかる。


「ちぃっ!」



 俺は足で迎撃しようとし、ぐっと堪える。決まれば有効打になるだろうが、武道など十年以上前に体育でやった柔道ぐらいだ。掻(か)い潜(くぐ)られた上足を噛みつかれれば勝機は消える。


 ならばと地面の土をひっつかんで顔めがけ放つ。目つぶしが功を奏し嫌そうにバガントが顔をそらした。少し目に入ったのか片目をつぶった隙を逃さず俺は一歩踏み込む。その動きに気づいたバガントだがさすがに遅い。

 俺は見えていない方からバガントの顎を掬うようにして蹴り上げる。口元から覗く長い牙を見ては直接顔を蹴る勇気はない。


 バガントの体が半回転して地に伏せる。俺は足で頭を固定し、バガントの胴体を強く踏んだ。肉を潰す嫌な感触を覚え少しだけ躊躇するが、怯んでる間にもバガントが必死の抵抗で抜け出そうとする。死ぬか生きるかってときに何を考えているんだ。


 足元にいるのは黒くて足の素早いあの虫だと思いこむ。


 急速に頭が冷える感覚。

 足を持ち上げ、踏む。

 踏む踏む踏む。

 踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む。


 気が付けばバガントは息をしていなかった。固定していた方の足は幾筋も傷がついている。辺りは血がまき散らされ、軽くスプラッタな感じだ。

 俺は大きく深呼吸し、念のためバガントの首を強く蹴ってから降りる。死んだふりをして背後から襲われてはたまらないし、脈を図るために首に手をやるなど論外だ。


 日本人だし、動物愛護の精神は勿論ある。

 しかし現実として命を狙われたとき、かわいそうとかいってられない。仮に命を助けた後、仲間を引き連れて戻ってこられでもしたら死ぬのはこちらだ。一匹でこれだけ苦戦したのだから。

 俺はふと思いつき、自分のステータスを確認する。


 青山和樹:Lv.2

 職業:プログラマー・召喚術師

 装備:布の服

 HP:14→15 MP:9→14 腕力:6→7 体力:6→8 知力:7→11 魔力:15→19 敏捷:4→5 器用:3→5

 スキル:解析眼 数値操作・弱 睡眠耐性・強 精神耐性・EX 召喚術 言語・全

 召喚獣:千影


 レベルが上がっている。数値は相変わらず雀の涙だが。

 MPや魔力の伸びは良いが、腕力や体力がそんなになのは召喚術師だからだろうか。


「……っと、そうだ、試してみるか」


 MPが二桁になったことだし、ともう一度召喚術を試してみる。

 サモン! とかはとりあえずやらない。

 千影のことを念じると、先ほどとは違い、すうっ、と体から何かが抜ける感覚。少し悪寒が走った。

 手応えとしては悪くないが、どうだ?

 さほど待つこともなく、ずぞぞぞぞぞぞ(、、、、、、、)、と俺の影から瞳を伏せた千影が現れる。ちょっと演出がホラー映画のようだ。夜中に見たら子供は間違いなく泣く。

 ……ん?

 あれ?


「ご主人様、大丈夫ですか! ああっ、こんなにも傷が深く。破傷風にでもなれば大変です。すぐに手当てをしないと」


 目に涙を溜めているのは影を通して俺のことをみていたのだろう。

 手早く水を患部にかけ、大きめの絆創膏を貼り付けると包帯を巻かれる。


「あの……」

「じっとしていてください。くっ、あの犬畜生、この森を焼き払ってでも一族郎党を根絶やしにしなければ!」


 いや、それはやりすぎだと思う。


「何をおっしゃるのですっ! ご主人様のお体をこんなにも……あぁっ! できることなら代わって差し上げたいのにっ! 心の臓を捧げればご主人様の体が癒えるというのなら、千影はもう……!」

「あ、やっぱ千影だよな? 妹とかじゃなく」

「え……ご主人様、記憶が……? まさか、傷が化膿してもう脳にっ! すぐに高名なお医者様をおよびしますね!」


 待て待て待て。

 走りそうになる千影? をなんとか止める。足の傷が脳にとか医者も困るから辞めてやれ。

 先ほどから困惑しているのは千影自身に対してである。


 契約を結んだときは二十歳そこそこの美人だったのだが、今はだいぶ小さい。見た目十歳前後だろう。それでも、くりっとした目や美しい髪は健在で、あと数年もすれば誰もが振り向く美少女確実である。美しく大輪の花を咲かせるのが、つぼみの段階で確約されているようだ。実際超を何個いれてもいいぐらいの美人になる。

 俺は千影をじっとみる。


 千影:Lv.1

 称号:おけsrのいjg こ;わえあいjは

 職業:妖怪・影女

 装備:なし

 HP:15 MP:10 腕力:3 体力:7 知力:9 魔力:20 敏捷:8 器用:10

 スキル:家事・EX 影収納 影撃ち 影分身 分裂 模倣

 状態:召喚(魔力不足)


 ……なるほど。

 この姿は俺のこめた魔力が足りなかったのが原因のようだと、状態の項目で察する。

 称号については……なんだろう、二つほどあるようだが、文字化けしていてよくわからない。これも魔力不足の影響だろうか。

 スキルについても、聞くなり検証するなりが必要だろう。

 しかし、取りあえず。

 一先ず千影がこの世界にもいることに、俺は安堵するのだった。

 

少しでも気に入ってもらえれば幸いです。

感想・レビュー・ブクマ等作者のやる気に直結します。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。