↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影女といく異世界紀行  作者: ケイン島谷
死亡・天恵・転移
3/34

003.異世界転移

「そろそろ異世界へジャンプするわけだけど、準備いいな? 無理でも飛ばすけど」


 降って湧いた桃色空間を霧散させるように職員の男が声を上げる。少し苛立って聞こえるのは気のせいだと思いたい。

 俺のせいじゃないし。

 役得ではあったが。


「もう一度しますか? ご主人様」

「しないから」


 今はとりあえず。

 そういえば抱きしめられたりとか影女の説明とか召喚契約とかで今まで突っ込めなかったが、千影がナチュラルにご主人様って呼ぶのなんなんだろう。他人に聞かれるとそういう趣味の人間なのかと思われそうで少々恥ずかしいのだが。主従の契約を交わしたしいいのか?


「そういうのあっちいってからやれって……俺だってあの時無理して酒飲んでゲロ吐かなきゃ良い線いってたんだがな」


 死後の世界にもアルハラってあるのだろうか。

 そんな俺の疑問をよそに、先ほどと同じように威儀を正し、祝詞をあげる職員。千影とともに四方から光の陣で囲まれ、ぽかぽかと気持ちいい。春の日差しのようで、ともすればうっかり寝てしまいそうだ。

 光が更に濃くなっていく。

 そうだな、異世界にいったら、まずは気が済むまで眠りたい。生前は毎日が寝足りなかった。

 三日ほど、腰がばっきばきになるまで。

 さすがに寝過ぎか?

 ははは。


「――聞食せと、恐み恐み申ぶっしょいっ!」


 …………。

 ぶっしょい?

 妄想の世界からくしゃみの声と共に現実に引き戻される。

 職員の男が視線をそらした。


「いや……あの、すまん」


 おい、なんだ。

 滅茶苦茶いやな予感がするぞ。  


「祝詞ってのは、それぞれの言葉に意味があってだな。ほら、言霊ってあるだろ? あれの超強化版みたいな奴でさ。人間がいう分にはそこまででもないんだが、下級とはいえ、俺みたいなのがポカすると、な? わかるじゃん?」


 早口でまくしたてる職員。

 わかりたくないだが?

 話しているうちに意識が遠くなってきた。


「まあ、たぶん、大丈夫だとは思う、最後の最後だしな? いや、最後だからキャンセル効かなかったって部分もあるんだけど。はー、これ始末書かなあ」


 こいつ自分の心配始めやがったぞ。俺の来世をなんだと思ってるんだ。


「案ずるより住めば都っていうし、大丈夫だ」


 サムズアップするな。新しいことわざを創造するな。

 くそっ、世界が白む。


   ☆


 ……………………。

 …………。

 ……。

 急速に、世界が浮上する。


「うっ……」


 青臭い。土の味がする。

 気絶している間に舐めたのだろうか。唾を吐き出し口を拭い、土を払って起き上がり、辺りを見渡した。

 どこかの森だろうか、広葉樹に囲まれている。

 鬱蒼としたそれらは陽がでているにも関わらず、そのほとんどを枝葉で隠しており、暗く不気味に映る。


「座標が狂ったのか……?」


 仮に異世界に飛ばすとしても、適当にうっちゃることはないだろう。

 たぶん。

 あの職員のことだからあまり信用できないが。

 そういえば、ここがどの程度やばいのか聞いていなかった。果たして、ほぼ前世と同じなのか、RPG世界よろしくモンスターが出て人間と領土を争っているのか。


 ……英雄になることも夢じゃないとかいってたしなあ。

 いや、スポーツ関連の天恵(ギフト)をもらって、そこでヒーローになるとか。

 ……望み薄いなあ。


 いや、天恵(ギフト)か。

 俺も召喚術の天恵(ギフト)をもらったんだし、ひとまずそれを試してみるか。一人で悩むよりよほど建設的だ。

 さっそく試してみよう。


「……どうやるんだ」


 おいおい、こういうの使い方が脳裏に浮かぶんじゃないのか?

 サモン! とか 来い、千影っ! とかやってみるが、何も起こりはしない。人目がないとはいえ、これはかなり恥ずかしい。厨二病をこじらせてるみたいだ。しかも森でやってるとか本気すぎる。

 小一時間ほど試してみたが、結局徒労に終わる。


 あの職員、次死んだとき思いっきりグーで殴ってやる。


 ひとまず召喚術は棚上げにする。できないことに理由があるのかもしれないし。

 ここが森で召喚するための領域が足りないとか。

 影女だけに夜じゃないと召喚できないとか。

 召喚の魔法陣が描けないと無理とかは、詰むので考えないことにする。

 まずはこの森の脱出だな。偶然人に会って教えてもらえるのなら良いのだが、都合よく会えるかはわからない。水の調達も必要になるだろうし、食料もだ。この辺に生えてる草って食えるのだろうか。


 ナバモドキ:茎と葉が可食。根は乾燥させると薬の材料になる。


「お?」


 しゃがみ、草に目を凝らしていると、突然文字がポップアップする。どうやら今みている草の情報らしい。


 ベラバール:茎が可食。葉に棘。

 コヤマノスソノネ:花と茎と葉が可食。バガントの好物。

 ドクナバ:頭痛、腹痛、舌のしびれといった中毒を起こすため食用には向かない。


 別の草を見ると、それぞれまた別の文章がポップアップする。

 これは……。

 俺は自分の胸のあたりを凝視してみる。


 青山和樹:Lv.1

 職業:プログラマー・召喚術師

 装備:布の服

 HP:14 MP:9 腕力:6 体力:6 知力:7 魔力:15 敏捷:4 器用:3

 スキル:解析眼 数値操作・弱 睡眠耐性・強 精神耐性・EX 召喚術 言語・全

 召喚獣:千影


「……おおう」


 なんか色々でた。

 MPが少ない。いや全体的に数値が微妙だけど。

 これが千影を召喚できない理由だろうか。

 解析眼や数値操作、睡眠耐性や精神耐性はたぶんプログラマ―としてのスキルや、前世からの引き継ぎだろう。この世界にパソコンがあればいいのだが。

 言語・全はなんだろう。

 ……あ、召喚獣と意思疎通できるようにか? 今のところ千影としか契約を結んではいないが、そのうち何か別の生き物とも契約を結ぶことがあるかもしれない。それでなくともこの世界では日本語は通じないだろうし、かなり助かる。


 しかし、それもこれも人里を降りてからの話だ。幸い食べられる草もわかったことだし、ある程度の飢えはしのげるだろう。

 ナバモドキの葉を千切り、食べてみる。

 うん、不味いわ。

 ただの野草だし、毒がないだけで人間が食べるために品種改良なんてしてないだろう。

 俺は葉っぱを五枚ほど更に失敬してから歩き出した。できれば食いたくはないので、早く森を抜けよう。

 俺はようやく歩き出すと、近くの茂みが小さく揺れ、何かが飛び出してきた。黒い毛並みの……なんだろう。犬とパンダを足して二で割ったような獣。ずんぐりむっくりした姿は愛嬌があるが、俺を見て唸ってるし、どうみても殺意振り撒いてる。


 バガント:Lv2

 HP:10 MP:0 腕力:8 体力:6 知力:3 魔力:0 敏捷:12 器用:3

 スキル:遠吠え


 さっき草を解析して見た名前だ。レベルは2なのに俺よりそれほどステータスがいいわけじゃないのは種族差だろうか。

 今にも襲い掛かってきそうなバガントだが、俺はずいぶんと落ち着いていた。

 精神耐性のおかげか?

 バガントは俺を睨みながら右に左にと視線を誘導させるように動く。まさかと思い振り返るが、後ろに仲間がいるということはなさそうで少しほっとした。しかしそれを隙と見たのか、ついにバガントは跳び掛かり、その爪を俺に振りかざしてきた。

少しでも気に入ってもらえれば幸いです。

感想・レビュー・ブクマ等作者のやる気に直結します。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。