020.初めてのクエスト
前話、魔剣の表記から魔法剣に変わってます。混乱させてしまって申し訳ありません。
新たな武器を手に入れた俺は足取り軽く隣接された防具店を覗いた。こちらも、武器屋と同じギルド公認ショップだ。整然と並んだ鎧、手甲、足甲、盾に兜。アクセサリの類も置いているようだ。
ここでは掘り出し物こそなかったものの、雷鳴剣を買ったことに驚かれ、革の鎧と靴の値段をサービスしてもらった。聞けば、武器屋の店主とは夫婦らしい。あのおっさんにこんな若い嫁さんがいるとは、犯罪じゃないのか?
盾術スキルがあるので盾を買うことも検討したが、やはり剣術スキルもまともにつかってないうちから盾に手を伸ばすのも、と思って辞めた。結局このまま盾を買わないかもしれない。
防具屋を出ると、最後に魔道具屋へと向かった。この町に来るとき助けた、ボードマン氏のいる商会だ。思ってたより結構でかい。
「いらっしゃいませ。おや、あなたは」
「どうも、ボードマンさん。商品見せてもらいにきました」
「それはそれは、ごゆっくり。ご不明な点がありましたら従業員をおよび下さい」
向こうの方から声を掛けられ、軽く頭を下げる。
魔道具屋と聞いて、大釜で茹でられた謎の紫色のスープとか、イモリの黒焼き、蚊の眼玉といった謎アイテムを置いているのかと思いきや、家電ショップにきた感覚に近かった。
電子レンジっぽいのや、洗濯機っぽいの、暗視ゴーグルみたいなのもある。見ているだけで楽しくなるが、忘れないうちに目的のものを探そう。
「ポーションってどこにあります?」
「ポーションでしたら左奥の棚ですね。初級と中級を置いております」
店員さんに聞いた通りに向かうと、瓶に入った薬品が並んだ棚に行きついた。飲んでも患部に掛けてもいいらしい。
「患部に掛けた場合は即効性はありますが回復量は若干減ります。奥まで完全には浸透しないのでしょう。飲んだ場合は逆ですね、じわじわと効いてくる感じです」
用法を聞き、初級を十五本、中級を三本だけ籠に入れる。初級一本80ゴルドに比べて中級は750ゴルドもする。回復量の差は三倍程度らしいが、危険な状況にあってちまちま回復などやってられないだろう。重ね掛けもあまり効果がないようだが、一応掛けながら飲むのはそこそこ使えるようだ。
「この、スタミナポーションっていうのは?」
「本来は魔力を回復するための物なんですが、今は精力剤としての側面の方が強いですね、人間は魔法を使えませんので。たまにエルフとか魔族のかたも買っていかれますが、町にいる絶対数も少ないですしね」
そういえば、この町にきて見た亜人は宿屋のリナールさんだけだ。他の魔族や獣人、ドワーフといった連中は見ていない。
「あれ、ギルド公認防具屋のミケさんとは会いませんでしたか? 彼女はドワーフですよ」
そう思っていたら、どうやら既に会っていたらしい。小柄な人だな、と思っていたが、あれで成人なんだそうだ。もしかしたら俺が気づいていないだけで他にもすれ違っているのかもしれない。
結局俺はスタミナポーションも五本買い、ボードマンさんににやりと笑われてしまった。
違うんだ、これは魔法剣を使うから必要なのだ。そう言い訳してもただの苦し紛れに思えて、俺は世の不条理に嘆いた。ならそういう使い方を絶対しないのかと問われれば、言葉を濁すだろうが。
そして俺は冒険の準備を終え、町に入るのとは別の門へと向かった。出る分には素通りできるらしい。門番が顔を覚え、帰ってきたとき万一覚えられていなかったとしても、住民票や滞在許可証、ギルドカードを見せればすぐに解放してもらえるとか。
俺たちは徒歩四十分の距離で、この世界に来た時とはまた別の森にたどり着いた。この森は、最高でもオークまでの魔獣しかでないらしい。ちなみにオークの魔獣ランクはEだ。バガントはFだが、八体以上の群れだとE扱いらしい。
「じゃあ、探していこうか」
「はい、ご主人様」
千影は既にレベル6にしてある。最初の頃に比べれば二歳ほど年齢が上がったように思った。
千影:Lv.6
称号:おけsrのいjg こ;わえあいjは
職業:妖怪・影女
装備:なし
HP:25→32 MP:24→33 腕力:8→12 体力:14→20 知力:21→29 魔力:35→45 敏捷:18→25 器用:23→33
スキル:影収納 影撃ち 影分身 分裂 模倣 家事・EX 影縫い 黒炎
状態:召喚(魔力不足)
影縫いはともかく、いつの間にか黒炎を覚えている。勿論俺がスキルをコピー&ペーストしたわけじゃない。
「あれほど目の前で教えていただきましたから」
相変わらず恐ろしいまでの学習能力である。相性もあるのだろうが、単純なスキルならなんでも自分のものにしてしまいそうだ。
「それでは、分裂にて数を増やして捜索にあたりますね。一人はご主人様のサポートにつきますので」
「ああ」
今回のレベルアップで三人まで分裂できるようになった千影は、同じ顔の自分と必死にじゃんけんをしていた。どうやら誰が俺のサポートをするのかで揉めているらしい。数十回の激闘の末、一人の千影が嬉しそうに跳ね上がり、二人の千影が信じられないものを見るような眼で己の手を眺めていた。君たち同じ存在じゃなかったの?
「それではご主人様、参りましょうか」
勝った千影はこの世の全ての幸福を掴んだような笑顔で俺の手を引いた。他の千影も失態を挽回するように、別方向に散っていく。
「今回は千影無双を止めて見せる」
天眼と解析眼を同時に発動させる。サーチ状態とでも名付けようか。目は確かに普段通りなのに、世界が俯瞰して見えた。およそ三十メートル四方だろうか。一応最大二百メートル四方にまで視界を広げることもできるようだが、目がチカチカし、脳が鈍痛を訴えてきたのでやめた。
三十メートル四方でも十分である。俺は順調に薬草やキノコを取っていく。せわしなく辺りを見渡す必要がないというのは本当楽だ。クエストにはなかった別種のキノコも、食べられるのならついでにもいでおいた。取ったものはミニ千影の影収納いきだ。
20分ほど過ぎただろうか。俺はサーチに魔獣が引っかかったことに気づく。
ツノウサギ:Lv2
HP:6 MP:2 腕力:3 体力:6 知力:2 魔力:1 敏捷:18 器用:5
スキル:気配察知 脱兎
名前の通り、ツノの生えたウサギだ。サーチ状態では解析はできてもスキルカットはできないようなので、肉眼で見る。遠目に、草から角をはみ出したウサギの姿が確認できた。今度はカットできるようなので、気配察知をカットする。脱兎は無理か。
気配察知を失ったウサギは、もそもそと草を食みながら虚空を見ていた。やはり気づかないものらしい。
ゆっくりと近づいた俺たちだったが、結局彼我十メートルほどまで接近したところでツノウサギに気づかれ、猛ダッシュで逃げられてしまった。まさしく脱兎。気配察知がなくてもあの大きな耳で音を拾われたらしい。
これはちょっと無理そうだ。弓とか、遠距離攻撃ができないと。森の中で黒炎なんて撃てないし、仮に撃ったとしても体の大半が消し炭になりそうだ。せめて投擲術スキルなんてものがあれば、石を投げて仕留めることも可能だったのだろうが。
気配察知のスキルを入手しただけ恩の字か。
気を取り直し、俺たちは採取を再開する。
その後、群れからはぐれたのか一頭だけいたバガントと対峙した。やはり剣術・強の力は偉大だ。初日の苦戦はなんだったのかというぐらい、あっさり一刀のもとに切り伏せた。
結局五時間前後採取をしていたが、魔獣と遭ったのはそれっきりだった。バガント退治のクエストは失敗だな。期限まで三日あるしまた来よう。たまに遠吠えが聞こえるから、いないことはないと思うのだがなー。
「千影、そろそろ帰ろうか。残りの二人を呼び戻してくれ」
「はい、ご主人様」
いうと、一体どこにいたのか、髪に葉っぱを乗せた二人の千影が俺めがけて全力疾走し、その勢いのまま抱きついてきた。俺は押し倒されながらも、二人の千影の頭を優しく撫でる。二人の顔には満開の花が咲き、最後にひとしきり俺の胸に頭を押し付けたあと一人の千影として統合した。
その後、俺たちはギルドに報告に向かい、俺がとった五倍はある薬草と、三種の毒草ときのこ、ついでに二十七匹のバガントと一四匹のツノウサギ討伐でギルドを沸かせた。ご丁寧に両方とも革に鞣された状態である。
バガント討伐のクエストは五匹分でよかったらしく、また討伐なのでバガントの上あごの犬歯二本を見せればそれが討伐した証拠になるらしい。Fランクにバガント五匹分持って帰ってこいなんて酷だろう。収納袋も高いし。
結局俺たちはツノウサギの革納品クエストも後付けで受け、その日も三〇万以上の報酬を得てギルドを後にした。悪戯が成功したみたいに千影が笑う。
「まだまだ、ママは負けるわけにはいかないのですよ」
ぐぬう、参りました。
いつの間にやらブクマが二ケタ、PVは2000オーバー、総合評価も66ptに!
今後も頑張って更新していきます!
少しでも気に入ってもらえれば嬉しいです。
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