人形姫の受難
『じゃあさ、その本の主人公みたいにダンスが上手くなったら、俺が
お前の、はじめてのパートナーになってやるよ!』
『――――――――――。』
――――――――――――――――――
ふと、幼い頃を思い出した。
(あの子は、いま何処に…………。)
いやっ!とにかくいまは目の前のこの公爵家三男をどうにかしなくては。レヴィがこれ以上怒り出す前に!
「何度も申し上げておりますが、先にお約束している方がいらっしゃいますので、」
「どこに? そいつの後でも俺はかまわないよ♪」
遠回しでも、直球でも、何度断っても諦めない厄介な人……どうしよう。話しが通じない彼と、どんどん顔が怖くなるレヴィ、気持ち悪いおなか……もう泣きそう。ハシバミ色の瞳を涙が邪魔し始めた。
ザワザワザワ―――――
(さっきから少し騒がしいけどどうしたのかしら?)
(?!?!?!)
目の前に現れたのは、背の高い明らかに高貴な男性。シャンデリアの光で神秘的に輝く真っ白な毛皮と、身に纏うのは金糸を使われ宝石が散りばめられている豪華な衣装。そして、何よりも皆の目を奪ったのはプラチナブロンドの髪に金色の瞳の、美しい横顔。
慌てて深く礼をする3人。その高貴な方がリーシャに目を向ける、
「(ボソッ)」
何かを口にしたが聞き取れない、頭をあげることができないので聞き返すこともできない。 すると、リーシャの前へ歩み寄り彼女のあごをつかみ顔をあげさせた。
「っ?!」
「泣いたのか?(ボソッ)」
もう頭がついていかない!
その美しい瞳を鋭く細めブランドン公爵令息様を睨むと、「お前か。」と詰め寄っていく。
(なぜかわからないけど、止めなきゃ!)
「お、恐れながら申し上げます!お話しが興に乗り少しふざけ合いすぎてしまっただけでございます。素晴らしい宴の席で申し訳ございません!どうか、お見逃しいただけませんか?」
いつもより重い左足を引き摺り、2人の間に小さな身を滑り込ませる。父よりも高い背の2人に挟まれたリーシャは、さながら肉食獣に囲まれた小さな子リス……
目の前の震える小さな肩を見て「チッ!」っと舌打ちをすると、高貴な方がリーシャの手を取る。
「この令嬢の先約は私だ!誰も近づくことは許さない!」
「―――――――――?!?!?!」




