偽物の公爵家令息
いつの世でも女性たちはおしゃべりが尽きない。仕立てたばかりのドレス、新しくできた美味しいお菓子のお店、デートを申し込んできた令息、今宵の宴でもそんな話に花を咲かせている。
〈ねぇ、ご存知?〉〈なぁに?〉
〈今夜は隣国の使節団の方を歓迎した宴だけど、〉〈ええ〉
〈本当は、先日即位されたばかりの国王様もいらっしゃっているらしいわ!〉
〈まぁ!本当に?〉〈とても美しい方だって噂よね!〉〈きゃー♡ぜひひと目お姿を拝見したいわぁ♡〉
〈……でも、私は少し怖いわ。〉〈なぜ?〉
〈だって、義兄である前国王を廃位されて新しく即位された方でしょう?王太后様も幽閉されたって……〉
〈あら、王族にはよくあることじゃない?それよりも、絶世の美男子ってところが重要よ♡見初められちゃったらどうしましょう♡〉
キャーやだぁ!アハハハハ ――――――。
―――――――――――――――
“なぁ、おい”“誰か止めろよ”
「ん?何だかあそこが騒がしいがなんだ?」
「え〜? あら、人形姫じゃない。人前にいらっしゃるなんて珍しいこと。」
「ぶはっWWW 人形姫ってなんだよWWW
―――なんだ〜、勘違い野郎に絡まれてるみたいだな〜 よし!面白そうだからちょっと見てくる♪」
「おい!ジーク」「あ!ジーク様ぁ」
―――――――――――――――
「――――――よろしいですか?」
とびっきりの笑顔を向けると、無礼男は明らかに焦り始めた。
〈まぁ……〉〈あの噂は本当だったんだな〉〈なんて痛々しい〉
外野の声と視線が煩い……でも、なんとでも言わせてやる!
「手を……、取っていただけますか?」
コツ、ゴトン、コツ、ゴトン
許可なく触れてきたくせに、いまは距離をとりただ青くなっている無礼男に近づく。
「―――あ、あぁ!そうだ、用事、用事を思い出しましたので、私はこれで失礼いたします!」
そう言って瞬く間に人混みの中に消えていってしまった。
“ふんっ!”心の中で二度と会わないことを祈り席へ戻ろうとした時、
「ぷっ、!ぶははははははWWW 」
「?!」
「いや〜、傑作WWW ご令嬢、きみはとても面白いな♪」
褐色掛かった肌に、長い銀髪の男性がヒーヒー笑いながら近づいてくる。また誰か知らない人……はぁ、疲れた。
「おっと!お手をどうぞ、お嬢さん。」
慣れない夜会で思っていたより疲れていたのだろう。フラついた私の手を取り、カウチへと付き添ってくれた。
「あー、ほら!みんな、解散!見世物じゃあないぞ!」
いつの間にか、何事かと集まってきていた大勢のギャラリー。そんな人々も彼の一言であっという間に居なくなってしまった。何者???
「ありがとう……ございます(ポソっ)」
可愛げなく言う私に彼は満足そうにニカっと笑うと、当たり前のように私の隣に座った。
「あいさつが遅れてすまない、俺はジークハルト・ブランドンだ!初めまして、人形姫♪」
ブランドン……?
公爵家?!
たしかにブランドン家の特徴の銀髪とエメラルドの瞳だけど……いつか噂に聞いた……
「『偽物の公爵令息』こと、ブランドン公爵家の三男坊です♪よろしく、『片足の人形姫』」




