不機嫌の理由
ガタゴト、ガタゴト
馬車の走る音。
「ハハハッ」
父とレヴィ、御者の楽しそうな話し声。
「「・・・・・・・・・・。」」
「あっ! リーシャ嬢、外見てご覧よ♪」
横を向いて不機嫌そうなアレクサンダー陛下と、ずっとご機嫌なブランドン公爵令息様。
リーシャの耐え難い時間はまだまだ続く。逃げようにも、ふたりの長い足がリーシャ側の座席まで伸び、ふたりの足に両サイドをガッチリ阻まれているため逃げられない……。
「ブランドン公爵令息様、昨夜は……」
「ジークハルト♪」
「ブランド……」
「ジークハルトだよ♪ 名前で呼んでくれなきゃ♪」
昨夜の繰り返し……。心の中で(はぁ……)と溜息をつき諦める。
「ジークハルト様。 昨夜は助けてくださりありがとうございました。」
「ん〜? なんのことかなぁ。 それより、リーシャ嬢と踊れなくて残念だったよ〜 どっかの誰かが邪魔してきたせいでさ☆」
ニヤッと笑いながら横に座るアレクサンダーを横目で見ると金色の瞳が鋭く光りジークハルトを睨む。
「ぶはははははWWW 冗談ですよ〜♪ そんなすーぐ怒っちゃ、リーシャ嬢に嫌われちゃいますよ 陛下っ♪」
ヒーヒー笑いながらアレクサンダーの肩をバシバシ叩くジークハルト。リーシャは内心ハラハラしながらその姿を見ていた。
(この方、不敬って知っているのかしら…………)
「あの……ヴァロワ国王陛下。 先程は危ないところをありがとうございました。」
アレクサンダーに深く礼をする。が、反応が無い。恐る恐る顔を上げるとやはり不機嫌そうな顔で横を向き続けるアレクサンダー。
(なによっ! なんで怒ってるの!!)
「「「・・・・・・・・・・。」」」
静まり返る車内。 しびれを切らしたジークハルトが大きなため息をつく。
「はぁー、空気重すぎ!! リーシャ嬢! 不貞腐れ陛下は放っておいて俺と楽しく過ごしましょ!」
「ジークハルト様……ええ♪ 王都のこと教えてくださいますか?」
不覚にも、王都での流行、社交界で起きた事件、次々に出てくる話題を面白おかしく話すジークハルトと会話が弾む。
チラッとアレクサンダーの様子を伺うと目を閉じて微動だにしない。
(眠っているのかしら……)
自分の膝掛けを起こさないようにそっとアレクサンダーに掛ける。
「こーんな拗ねキング放っておいたらいいのに〜」
ジークハルトが不満そうに言うが、首を横に振り笑顔を向けるリーシャ。
「さぁ、お話しの続きを聞かせてください♪」
――――――――――――
コン、コン、コン
窓を叩く音。
カーテンを開けるとグランバル伯爵が声をかける。
「この先の木陰で休憩するよ。座りっぱなしで、体は大丈夫かい?」
大丈夫よ!と元気に伝えると優しく笑う父。程なくして休憩先に到着した。
扉を開けいの一番に外へ出るジークハルト。大きな体を更に大きく伸ばすとボキボキ骨が鳴る音が聞こえる。
「あーーーーー、体カッチカチ! 空気が美味い!!」
骨の音に恐怖を感じながらリーシャが続いて降りる準備をする。席を立ち扉に手を掛けた瞬間、
『グイッ』
突然腕を捕まれ、驚き振り向くと寝ていたはずのアレクサンダーの瞳がしっかりと開き金色の瞳がリーシャを見つめている。




