新しい家族
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グランバル伯爵家の馬車の中
(―――――っ!?)
「お父様と、レヴィはどこに?!」
我に返りリーシャが声を上げるとすかさず、
「お嬢様! どうかされましたかっ?!」
御者台の小窓からレヴィが顔を覗き込む。リーシャがほっとしたのも束の間、アレクサンダーとジークハルトに睨みを利かせる。
「……お嬢様に何かしたのか?」
慌てて両手でレヴィの顔を隠し宥めるリーシャ。一国の国王と公爵令息に不敬を!!!!
「レヴィ、あぁ良かった……。 お父様はどちらに?」
「旦那様は、」チラッ
「あぁ、伯爵は……」チラッ
「御父上なら、窓から外を見てみなよ♪」
互いに顔を見合わせるレヴィとアレクサンダー。そして笑顔のジークハルトに促され日除けのカーテンを開けて馬車の外を見ると、
「パパっ?!」
金色の鬣が美しい栗毛の馬に跨り、リーシャたちが乗る馬車と並走しているのはリーシャの父!
「やぁ! リリー」
その姿に驚き窓を開けると、思わず滑り落ちそうになる。慌てて馬に乗ったまま窓のすぐ側まで近づき両手を広げて待ち構える父。間一髪のところでアレクサンダーがリーシャの腰を支えて車内に引き戻してくれた。
「あっぶな!」額に汗をかいたアレクサンダーに「ありがとう、ございます。」とお礼を言うと再びリーシャの視線は父に向けられる。
「リリー、平気かい?」 心配そうに尋ねる父。
「ええ、ありがとう。
お父様、その馬は? なぜ外に?? なぜおふたりが一緒に???」
この現状に追いつけていないリーシャが父に問いかけると、一瞬考えるような素振りをした後にっこり笑う父。
「私のかつての相棒の孫だそうだ! ブランドン公爵から譲り受けたんだよ♪」
そう言って馬の背中を撫でる少年のような無邪気な笑顔の父をリーシャは初めて見た。
手綱を引くとリーシャの方へ顔を向ける栗毛の馬。優しい濃い茶色の瞳がリーシャを見つめる。
「私と同じ栗色ね、これからよろしくね!」
窓から手を伸ばすと、自分の鼻先をリーシャの手に擦り寄せ「ヒヒンっ♪」と嬉しそうに鳴く。
「リーシャ嬢は馬よりもリスって感じだけどね〜♪」
ジークハルトが頬を膨らませ指でつつきながらそう言うと一同『うんうん。』と頷く。
(もうっ!)
頬が真っ赤になるリーシャ。
そんな娘の姿を微笑ましく見つめながら父が続ける。
「ヴァロワ国王陛下は、かつて過ごした我が領に赴きたいとのご要望があったのでご招待したんだ 。」
「ブランドン公爵令息様はこれからの交易を深める為の視察でいらっしゃって下さったんだよ♪」
納得せざるを得ない父の言葉。
「グランバルまでの道は長いから、みんな仲良くするんだよ(^^)」
(・・・・・・・ん???)
「パパっ! まさかずーーーっとこの状態で帰るの?! 」
「うん? 陛下と公爵令息様に馬で移動していただく訳にいかないだろう?」
リーシャは目の前が真っ暗になった。こんな気まずい状況耐えられないっ!!
娘の心情を知ってか知らずか、新しい相棒の背中でニコニコ楽しそうな父。
「御父上! 僕のことはどうかジークハルトとお呼びください♪
ってことで、よろしくねリーシャ嬢☆ パチッ」
相変わらず様になっているウインクをリーシャに向けるジークハルトと、不機嫌そうなアレクサンダー。
リーシャの長い帰路は始まったばかり……。




