リーシャとふたり
「―――狭いな。おい、そっちに寄れ! お前降りろっ!!」
(なんで…)
「えーっ! ちょっ、陛下痛っ!! 俺もう限界まで端っこですよ〜 」
(どうなってるの……)
リーシャの目の前でプラチナブロンドと銀色の髪が小競合っている。
貧乏伯爵家の小さな馬車に似合わない上質な衣服と、父やレヴィよりも大きな体躯のふたり。
普段、体の大きい父とレヴィ、母、リーシャが乗ってギリギリな車内が今日は3人でいっぱい。
(なんで? なにが起きているの? )
リーシャの頭に『???』が浮かび続ける。
「アレッ、っ! ヴァロワ国王陛下! ブランドン公爵令息様!
なぜ我が家の馬車にっ?! 」
リーシャの言葉に不満そうなアレックス(ヴァロワ国王)と笑顔のジークハルト。
ジークハルトを長い脚で端へと追いやると、ため息混じりに口を開く。
「お前、聞いてなかったのか? バドスピーク国王とグランバル伯爵には許可されてるぞ。もちろん、王妃にも…………。」
ラスタの名前を口にして青ざめるアレックス。二人の間に何があったのか……。
「俺も♪ 御父上にお許しいただいてますよ ♪」
ジークハルトが楽しそうにそう言うと、「お腹すいてない? これどーぞ♪」とリーシャの手に可愛らしい包みのキャンディを手渡す。
「ありがとう」と無意識に頬張ると、その甘さについ口元が緩んでしまう。
幸せに膨らんだ頬、そんなリーシャの姿をニヤニヤしながら見つめるふたり…………。
「ん゛ん゛っ! 」
自身を見つめる視線に気づき顔を赤らめむせるリーシャ。
(どうなってるのーーーー?!)
―――――――― 数刻前。
大量のお土産とじいやから譲り受けた大切な希望を丁寧に荷馬車に乗せ、出発の準備が整った一行が一息ついている時だった―――。
『アンヌの部屋』に併設された応接室。国王夫妻とグランバル伯爵一家でお茶を共にしていると、
コン、コン、コン
扉を開けたマリアに従者がことづける。困り顔の従者からの伝令を聞いたマリアが静かにレナート国王とラスタ王妃に伝えた。
「ブランドン公爵が? 何用だろうか…… 」
「急用でないなら、今はお引き取りいただいて。」
「それが、お嬢様にお会いしたいと切願されている様です……」
「リリーに???」
ラスタ王妃が怪訝そうな顔でリーシャとグランバル伯爵に目線を向ける。
「我々は構いませんよ?」
グランバル伯爵の言葉に頷くとマリアにそっと目配せするラスタ。
タッタッタッタッタッ
廊下から慌ただしい足音が聞こえる。
コン、コン、コン
「失礼いたします―――」
従者が扉を開けるやいなや、一同の前に丸々とした姿が飛び込んできた。
「この度は、
たいっへんっ!!、失礼いたしましたーー!!!!!」




