出発
「嫌ぁ、リリーと離れたくないーーー!( ; ; )」
リーシャをガッチリ抱きしめ涙を流すラスタ王妃。マリアや他の侍女達が一生懸命宥める。
グランバル伯爵領への帰路の準備が整うと、伯爵家の馬車では乗り切れない程の荷の数になり、荷馬車を借りていかなくてはならなくなってしまった。
連なる一団を見て、「アンヌが驚いてしまうなぁ」とグランバル伯爵が困ったように笑った。
「ラスタ、そろそろ出発しないとグランバルまでの道は遠いんだぞ……」
困ったように国王レナートがラスタに語りかける。「でもぉ」なかなかリーシャを離そうとしない。
「陛下、ラスタ様、本当にありがとうございました! 」
「是非、グランバルにも遊びにいらっしゃってくださいね♪」
リーシャの言葉に涙ながらに頷くラスタ。
「―――っ、これをアンヌに渡してくれる?お手紙、とっても嬉しかったわ……ありがとう」
リーシャの手に一通の封筒が渡される。美しい封筒には可愛らしい花が添えられ、ラスタ個人の印章で封蝋されている。
昨夜渡せなかったアンヌから託されたラスタ王妃への手紙。本来であれば王族へ検閲もなく手紙を渡すことは禁じられているが、今朝マリアに預けようとすると、「直接お渡しください。きっと喜ばれますよ。ニコッ」と返されてしまった。
朝食後、庭園を散歩しながらラスタへ。リーシャの頭の中に涙を浮かべ喜ぶラスタの姿が思い出される。
「また伺います。今度は母も一緒に^^」
涙を流しながらリーシャの頬に別れのキスをするラスタ。
「レヴィー!」次はレヴィの様だ……。
微笑み様子を見守るマリアと他の侍女や従者にも挨拶をする。
「マリア様、皆様、本当にお世話になりました。じいや様にも。ありがとうございました」
「いいえ、私共もご一緒できたこと嬉しく思います。またお会いできる日を楽しみにしております。道中、どうかご無事に……」
ニッコリ笑い綺麗に礼をする一同。思わずマリアに抱きつくリーシャ。マリアも答えるようにギュッと抱き締め返した。
「気をつけてね、元気で―――」
馬車に乗り込もうとするリーシャの手を瞳に涙をいっぱい貯め握るラスタ。レナートが目配せすると、大きな腕がリーシャを馬車の中に引き寄せた。ドアが閉まると『よし! パチンッ』と鞭の音が鳴り響き、すぐに馬が動き出す。
小窓を開けて小さな手を一生懸命振る、
「ありがとうございましたー!」
レナート国王に肩を抱かれ、ラスタ王妃も目一杯腕を振り続ける。小さくなっていくその姿が見えなくなるまでリーシャも手を振り続けた。
「ぐすっ、ラスタ様……皆様、本当にありがとうございました……」
「はぁ、やーっと出発できたな。ラスタ王妃の可愛がりは異常だろ。」
「こーんな可愛らしいリーシャ嬢、離れたくないに決まってるでしょ♪」
・・・・・・・・・ん?
「なんであなた達がここにっ?!」「なんでお前がここにっ?!」
「ぶははは♪」




