完璧な女性(ひと)
色とりどりの花が咲き誇る王宮内の庭園。その姿を充分に楽しめる一角に、ラスタ王妃が作った特別な場所─────。
楽しそうな鳥たちの声で目が覚める。
瞳をゆっくりと開くと見慣れない天井と、見慣れない女性。
「おはようございます、お嬢様。 ニコッ」
美しい笑顔と姿勢でお辞儀する綺麗な女性。
(あぁ、そっか。ここは王宮…)
昨日アレックスと再会したあの後、リーシャの様子を心配したラスタ王妃が再び部屋に戻ると泣き崩れるリーシャの姿。
怒り狂ったラスタはアレックスの首根っこを掴むと、そのまま部屋から追い出してしまった。(他国の賓客、しかも国王を……)
(アレックスは無事かしら?でも、あのアレックスの姿…ふふ♪)
大きな体のアレックスが子猫の様に連れられていく姿を思い出しつい笑い声が漏れる。そんな事を考えていると、優しく微笑みながら綺麗な女性が口を開いた。
「お嬢様、朝のお支度をはじめてもよろしいでしょうか?
今朝は両陛下より朝食をご一緒に、と伺っておりますが。」
そうだった!昨夜ラスタ様から朝食にお誘いいただいていたんだ!!
「…よろしくお願いします。」
少し恥ずかしそうに言うリーシャに、「畏まりました。ニコッ」と美しい笑顔で答える。
リーシャの髪を優しく梳く美しい女性の名前はマリア。
ラスタ王妃から昨夜紹介された王妃付きの筆頭侍女だ。つまり、王宮で働く女性たちの中で1番偉い人!!
そんなマリアが田舎の貧乏伯爵令嬢の世話をするなんて……。リーシャはいたたまれない気持ちでいっぱいだったが、当のマリアはとても嬉しそうにしている。
「私が王宮へ出仕してすぐの頃。何もわからない子供の私に寄り添い、一から全てを教えて下さったのがアンヌ様です。」
「私にとってアンヌ様はかけがえの無い、永遠の憧れなのです。」
そう言い自らリーシャの世話係を勝手でたマリア。そんな彼女の美しい所作が眩しく感じる。
(こんなに完璧なマリア様の憧れの方がお母様だなんてっ―――♪)
嬉しくてついニコニコ笑顔が溢れるリーシャをマリアも笑顔で見つめる。
「お待たせいたしました、お嬢様。お支度が整いましたよ。ニコッ」
マリアの手で美しく結い上げられた栗色の髪、顔には普段はしないお化粧を少しだけ施し、ラスタが用意した淡い若草色の美しいドレスを身に纏う。
鏡の前に立つと、リーシャは見たことの無い自身の姿に驚く。
「まぁ! お姫様みたい♪ 」
「マリア様!ありがとうございます!」
ぴょんぴょん飛び跳ね鏡の中の自分を何度も見返し喜ぶリーシャにマリアも笑顔が溢れた。




