戻りつつある日常
〈お嬢さまの意識が戻られたそうだ!〉
グランバル伯爵領に久しぶりに明るい話題が広がる。皆に笑顔が溢れ、喜びに涙を流す人々─────。
領主の屋敷には領民から焼きたてのパンや野菜、手紙など様々な見舞いの品が届けられた。
ベッドの上で起き上がる時間が増えたリーシャは、届けられた見舞いの品を嬉しそうに見つめていた。
「まぁ!こんなにお手紙も!ふふっ♪」
手紙には領地のこどもたちが描いたであろうリーシャの似顔絵と可愛らしい花が添えられている。
「はやく元気になって、みんなに素敵な贈り物のお礼をしなくちゃ!」
目覚めてから1ヶ月程経過した。
最近は、ラスタ王妃からの秘薬を飲まなくても痛みを感じることはなくなり、マルク医師の許可がおりたため車椅子で屋敷内を移動することができた。
朝の支度と食事を済ませ、レヴィに抱えられ車椅子に座る。そのままレヴィに押してもらい屋敷内を散歩するのが近頃の日課だ。
ベッドの上で過ごすうちに、あっという間に季節は冬。屋敷の窓から見える村も、崩れた建物はまだ残っているが本格的な冬が来る前に寒さを凌ぐ為の修繕は間に合ったようだ。
(よかった……)
心の中でそう呟きほっと胸を撫で下ろす。
「お嬢さま、湯浴みの準備が整いましたよ♪」
レヴィと交換しマーサが車椅子を押し浴室へ。車椅子から降り、マーサの手を借りながらバスタブへと向かう途中、壁に掛けられた大きな鏡に目が止まる。
(歪な身体……)
鏡に映る見慣れたはずの見慣れない自身の姿をリーシャはじっと見つめる。鏡の中にはスラリと伸びた右足と、対になる左足は膝から下が映っていない。
「さぁ、お嬢さま?」
心配そうにリーシャの手を引くマーサ。
「ごめんね、ばあや。」
「パパやレヴィのように、わたしも鍛えないとね!またレヴィと鬼ごっこする時、わたしひとりで歩けるように♪」
ニヤッと悪戯げに笑うと、マーサも目を細めニヤッとする。
「あらぁ、ふふ♪あまりレヴィ様を困らせてはいけませんよ?」
顔を見合わせマーサと笑い合う。
─────ゾワッ!
浴室の外で待機しているレヴィの背筋に鳥肌が立つ。
(???なんだかイヤ〜な予感……)
「最近寒くなってきたから、風邪引いたのかな?」
浴室でこっそり企まれている計画を知る由もなく、レヴィはふたりが出てくるのを待ち続けた。




