お嬢様とばあや
「おはようございます、お嬢さま!今日は気持ちのいい秋晴れですよ♪」
マーサが元気いっぱいにカーテンを開くと、綺麗に磨かれた窓ガラスから朝日が射し込みリーシャの顔を照らす。
「うっ、眩しい……(きのう、そのまま寝ちゃったんだわ)」
レヴィが部屋を出ていった後、そのまま泣き疲れて眠ってしまったようだ。
「さぁ、まずは身体を拭いて、髪を整えましょうね。それからごはんにしましょう♪昨日はそのままお休みになられたので、お腹が空いていらっしゃるでしょう?」
テキパキとお湯の入った湯桶を運び、リーシャの身体を拭き始める。
「痛みがはやく引きますように。」
「傷が綺麗に治りますように─────。」
シワだらけの大きな働き者の手で大切な物を扱うように丁寧に布で拭きながら、小さな声で祈りの言葉を捧げる。
薬を塗り新しい包帯で左足を巻き直し、洗いたての寝巻きに着替えると石鹸のいい香りが沈んだリーシャの心に少しだけ爽やかな風を吹かせた。
「─────ねぇ、ばあや?」
「はい、どうなさいましたか?」
櫛で優しく髪を梳きながらマーサが答える。
「とても悲しい気持ちなの。ばあやは悲しいことがあったら、どうやって乗り越えるの?」
リーシャの鼻の奥がまたツンとして、涙が瞳に溢れ出てきた。
「悲しい気持ちや辛かったことは、決して忘れることはできません。」
「悲しいことがあって立ち止まってしまっても、生きている限り明日はまたやってきます。
ですが、それよりももっと楽しかった思い出や、嬉しかったことがあります。その気持ちを心の中で持ち続けて、『さぁ!今日は昨日よりも、もっと笑おう!幸せに生きよう!』って思うのです。」
マーサが優しくリーシャに語りかける。
「お嬢さま、いまは涙を隠さずにたくさん泣いていいんですよ?いーーっぱい泣いて、その後たくさん幸せなことを増やしましょう♪」
大きく頷き、涙を流すリーシャの背中をマーサがやさしく摩った。
「さぁ、では食事をお持ちしますね♪コックが腕によりをかけてお嬢さまへお作りしたんですよ♪」
そう言ってマーサが部屋から出ていくと、あっという間に湯気の立つお皿を乗せたワゴンを押して戻ってきた。部屋の中が美味しい香りに包まれる。
ベッド脇の椅子へ腰掛けると、スプーンですくい「熱いのでお気をつけて。」とリーシャの口へと運ぶ。
「──────────!!美味しい!!」
出来たてで温かいお粥が口の中を幸せでいっぱいにしてくれる。優しい味が元気になって!と応援してくれている気持ちになった。
真っ赤な頬でもぐもぐたべる姿を優しく微笑みマーサが見つめる。
「いっぱいたべて元気になりましょうね。」
「(もぐもぐもぐ、ゴクッ)うん!
ねぇ、ばあや? わたし、泣くのは今日で最後にしたわ!明日からはいーーーっぱい笑ってすごすの!」
「ふたりにまた会える!そう思うの。アレックスに笑われないように元気になって、歩けるようになって、ダンスの練習もがんばらなきゃ♪」
そう言って笑顔を見せるリーシャ。マーサが微笑む。
「ええ、皆様もばあやもついていますよ。」




