待ち望んだ時
リーシャの傍を離れないと言うラスタ王妃を宥め迎えの馬車へ乗せ、レナート国王は王都へ帰って行った。彼の傍らには、ローガンから渡された剣も……。
国王夫妻が帰った翌日────
窓から入ってくる秋の風に少しずつ冷たさを感じ始めた。本来であれば、祭を楽しんだ後、近づく冬への準備を始める頃……。
今年のグランバル領は例年と違った。王都から届いた物資を頼りに、これから続く長い冬への対策で領民一丸となり壊れた家屋や荒らされた土地の回復に忙しく動いている。
「────────────ま、───」
「っ!」
ベッド横の窓を閉めようと席を立ったアンヌの耳に、愛しい声が……。
振り向いたアンヌの目に涙が溢れてくる。そこには、薄く開きアンヌを見つめている大好きなハシバミ色の瞳。
「リ、リリー!!!」
リーシャに抱きつき大きな声で泣くアンヌ。その声に気づいたレヴィとマーサが部屋に入ってきた。
「お嬢様っ!!」
ふたりともリーシャに抱きつき涙を流しながら喜んでいる。旦那様をっ!そう言ってマーサが父に伝えに走っていった。
バンッ!
勢いよく部屋のドアが開くと、肩で息をするグランバル伯爵。いつも綺麗に整えられている髪が乱れている。
「リーシャ……」
ベッドの上の愛しい娘の名前を呼ぶ。
「────ぱ、────ぱ」
弱々しい声だが、彼にはハッキリと聞こえる。
「うっ────」
堪えきれず涙が頬を流れる。涙を拭うこともなくリーシャとアンヌ、そしてレヴィを大きな腕で抱きしめる。
(パパとママとお話ししたいのに……声がでない…………
どうしてこんなに体が痛いの……?)
リーシャが目覚めたと報告を受けた医師がすぐに駆けつける。
(ニコニコ先生、どうしてそんな顔しているのかしら……)
いつも穏やかな笑顔で領民を見守るグランバル領唯一の医師。そんな彼の真面目な顔を不思議に思いながら、まだハッキリしない意識の中リーシャは見つめている。
「っ! 熱も許容範囲内、脈拍も正常……っ!」
ニコニコ先生が泣きそうな顔で言う。
「よく……頑張りました。」
先生がリーシャの頭を撫でる。
「領主様、治療は確実にお嬢様を助けて下さいました……お嬢様の未来を守ったのですよ。」
その言葉に部屋の中の皆が堪えきれず涙が溢れる。
(パパ、ママ、レヴィ……マーサも。どうして泣いてるの?)
思うように動かない体と、なぜか違和感を感じる左足。
(あぁ、目を開けてるのか辛い……眠く…………なっちゃう……………………。)
リーシャは再び眠りに落ちる。今度は、穏やかな眠りに────────




