騎士として
ベッドに横たわるリーシャの小さな手を握りしめながらラスタは静かに涙を流していた。そんな彼女の肩を抱き、寄り添うアンヌ。
ふたりを部屋に残し、廊下に出るとレナートがポツリと話し始める。
「手紙の件だが、」
「お前の言う通り東側を抑えたよ。未だに奴らを拿捕したとの報告は無いが……今回の件、族の正体になにか手掛かりがあるのか?」
レナートの問に少し間を置いてローガンが口を開く。
「領地を襲ってきた男……『団長』と呼ばれた男の胸に、鷲を模した紋章が見えた……。」
そう言ったローガンの瞳が鋭く光る。
あの日、気を失ったリーシャとレヴィを屋敷まで運んだ後、領地を襲った男達と争った場所まで戻ると、奴らの遺体は燃やされ、身元がわかるものは何一つ残されていなかった。
『団長』と逃げた仲間達についても、広い領地の中くまなく探したが有力な手がかりは掴めず……。跡形もなく奴らの痕跡は消えてしまった。
「ヴァロアの騎士達は皆一様に国章を付けるが、王家の元には秘密裏に動く組織がある。その者たちは国章を模した別の紋章を与えられるんだ。
あれは確かにヴァロアの王族が扱う物だ」
「っ?!王族関係者ということか?!」
「ヴァロアの王家が我が国に刺客を?!そんな……」
他国の者が秘密裏に侵入し国内で争いを起こせば国家間の問題になる。それが王族の手の者ならば更に……レナートは頭を抱えた。
「奴らがヴァロアの人間だという証拠は何も残っていないんだ……。無理に問いただせば国同士の問題になりかねない、最悪の場合また争いが始まる可能性も……」
「今回の事は、私たちの間だけで留まろう。君は、被害を受けた町や人々の復旧と支援を頼む。」
そう言うローガンの顔を悩ましげに見つめ、深く頭を下げる。すまない、と小さくレナートが言った。
腰に携えた剣を取り外し、レナートへ渡すローガン。
「すまない、君の築いていく国を共に守ると誓ったが……私にはその資格が無くなってしまった。」
「…………。」
「刃を向けた……。大切な我が子に……。
私は二度と剣を握ることは出来ないっ────」
ローガンの頬を一筋の涙が流れる。レナートは差し出された剣を黙って受け取った。




