幼い日のレヴィ
慌ただしい屋敷内。出入りする人々。
〈負傷者はこちらへ!〉〈毛布を用意して!〉〈薬が足りないわ、もっと多く持ってきてくださる?〉
侵入者との争いで傷ついた領民達をアンヌや避難していた女性達が次々と看病している。
「どいてくれ!お嬢様とレヴィ坊が大怪我をされたんだ!はやくお医者様を!!」
「キャー、リリー!!!レヴィ!!!」
父の腕に抱かれる血の気が引きぐったりしたリーシャと、傷だらけのレヴィの姿をみて、アンヌが悲鳴を上げる。
「嫌よ、どうしてこんなっ────」
泣き崩れるアンヌ。そんなアンヌの震える肩をそっと抱き寄せるしか父には出来なかった。
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数日後、レヴィは一人で歩ける程回復していた。が、目が覚めてからというものずっと暗い顔で過ごしている。
あの日屋敷に運び込まれたリーシャは直ぐに深く突き刺さったナイフを取り除かれ処置が行われたが、熱が高く意識が戻らない状態が続いていた。母や使用人が交代で看病する中、いつもは真っ先にそばに寄り添うはずのレヴィが居ない。
ひとり、静かな庭でリーシャの部屋の窓を見つめる。
真っ黒な瞳に涙が浮かんでいた。
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レヴィは戦争孤児だった。
レナートの王太子時代、敵の襲撃を受けた村へ視察に向かうと、焼けた家屋の中でひとりの子供をバルテル卿が見つけた。
歳は3~4歳程だろうか。自身のことは『レヴィ』という名前しか語らないやせ細ったその幼い子を王都へと連れ帰り騎士団で一時保護する事にした。
王都への帰路の中、一声も発さない暗い瞳の子供。皆代わる代わる笑いかけ、声を掛け続けたがレヴィの笑顔を見ることすら出来ずにいた。
そんなレヴィが唯一、小さな手でバルテル卿の外套の裾を握りしめ、常に彼の傍を離れようとしなかった。
バドスピーク王国では珍しい黒髪と黒い瞳……。
〈蛮族の生まれではないのか〉〈他国の子は奴隷として扱うべきだ!〉
その容姿を不気味がり様々な声が上がる。そんな中、
「国や種族は関係無い。どんなに国が栄えようと、幼い子も見捨てるような国で私は生きていくつもりは無い。騎士としてその様な国を守るつもりも無い。」
バルテル卿の言葉で批判的な人々は口をつむぎ、レヴィは正式にバドスピーク国民として騎士団で生活する様になった。




