国王と父
バドスピーク王国の宮殿では、国賓を招いての盛大な宴が催されていた。
誰もが心奪われる天井の絵画、豪華絢爛な装飾の大広間には色とりどりの美しい花が飾られ、王国きっての料理人が腕を振るった見るも鮮やかな料理が並べられている。
国内外から呼び寄せられた一流の楽士たちが奏でる音楽に、リーシャは今にも踊り出したい気持ちでいっぱいになった。
が、同時に心が苦しい。父やレヴィに気づかれてはいけない。
“片足の人形姫か―――。”
「ローガン!」
テラスへの窓横のカウチに座り、レヴィに小言を言われながら本日3個目のケーキを頬張っているとその大きな人はやって来た。
「久しいな!よく来てくれた!」
大きな体で父を抱きしめると、ハハハハハ!と体に似合った大きな笑い声で父の背中を叩く。その瞳にうっすら涙が浮かんでいるのをリーシャは見つけた。
「へ、陛下!(こら離さないか!)」
父が小さな声で、陛下と呼んだ男を諌めた。歳を取り少し小さくなったが、一般的な男性よりも父はしっかりした体格だ。そんな父が小さく見える程大きな体躯をもった彼は、この国の国王。
「ハハハ!いやー、すまん!嬉しくてなぁ!
リーシャ嬢も大きくなった」
父を解放するとこっそり涙を拭い、リーシャの顔を笑顔で見つめた。父娘を映すサファイアブルーの瞳は慈愛に満ちている。
乱れたクラバットを直し、父はグランバル伯爵として姿勢を正す。
「陛下、今宵は―――」「かたい挨拶は無しだ!」
間髪入れず挨拶を遮られ、父の手を握る陛下。父も諦めた様子で、フッと笑う。固く握手を交わすふたり。
その眼には涙が浮かんでいた。




