不穏な気配
※暴力的、流血の表現があります。苦手な方はご注意下さい。
グランバル伯爵領から少し離れた街。多くの人々が集う酒場────
「妻と子を探しているんですが────。」
賑やかな店内でひとりの男が客たちに訪ね歩いている。
「なんだ兄さん、妻子に逃げられたのか?!」
「ガハハハハハ不甲斐ねえなぁ(笑)」
「元気だせよ!さぁ今夜は飲め!」
酒に酔い気分が高まっている客たちが思い思いに男へ声をかけると、男は「ハハハ。」と変わらぬ笑顔で返事をする。
「白金色の髪色をした息子なんです。見かけた憶えはありますでしょうか?」
「白金色?!見かけないなぁ。」
「そんな珍しい髪色、いたら大騒ぎだろWWW」
そりゃそうだ!と客たちはさらに笑い声をあげる。男は小さく舌打ちした。
すると、ふと1人の男が思い出したように呟いた。
「そういえば、行商人のトットのおっさんも白金色の髪の話しをしてたなぁ」
「(っ?!)それは、どちらの方ですか?」
「あぁ、この次の通りの端にある家だよ。トットっていうんだ。」
男はニヤリと笑うと、「ありがとう。」と店を後にした────────。
店の外には黒い外套を纏った男が数人……。
「お疲れ様でした。」と店から出た男に声をかけると、
「燃やせ。」
その一言で男達が一斉に酒場を囲み火をつけた。
〈ん?なんか煙臭くないか?〉〈た、大変だ!店が燃えてる!!〉
〈っ?!〉〈どういう事だ!四方から炎が!!出口がっ────!〉
────────────────
コン、コン、コン
家のドアをノックする音。
(こんな遅い時間に誰だろう?)行商人のトットが部屋の奥から出てきた。
コン、コン、コン
訝しげにドアを開けると、笑顔の男がひとり立っている。
「トットさんで間違いないですか?」
そうだが、と答えると男は続けた。
「息子を探しているんです。あなたが白金色の髪を見たというお話しを小耳に挟んだものですから…。夜分遅くにすみません、お話しを伺いたくて……」
そう言う男にトットは快く快諾した。
「そうなのかい、大変だったねぇ。白金色に光る髪の男の子だった。確かにワシはこの目で見た!他の皆は見間違いだと笑うがな。」
「どちらで?」
「グランバル伯爵領だ。」
ニヤリ
ドスッ
「────っ?!」
胸から真っ赤な血が溢れ出てくると、トットはそのまま倒れ込んでしまった。「あ゛っ、な……にをっ」息も絶え絶えに男を見つめる。
「ありがとう♪」
────────────────
〈大変だ、トットさんの家から火が!〉〈トットさんは無事か?!〉
〈はやく!もっと水だ!!!〉〈ダメだ!火の回りが早すぎる!〉
慌ただしい人々を横目に馬に乗った男達が街を出る。
「グランバルだ、急ぐぞ」




