エイルの父の訃報
秋の半ば、エイルに知らせが来た。
父が亡くなった。
ガルドがエイルの部屋のドアをノックしたとき、エイルは手紙を持ったまま、ベッドの端に座っていた。
「入っていいか」
「……どうぞ」
「聞いた」
「はい」
ガルドが部屋に入り、向かいの椅子に座った。
何も言わなかった。
エイルも何も言わなかった。
しばらく、静かな時間が続いた。
「泣いていいんだぞ」とガルドが言った。
「……泣き方が、わからなくて」
「そうか」
「父とは、あまり話したことがなかった。でも最後に話せた。それは良かったと思っている。でも、もっと話せたかもしれないとも思っている」
「どちらも本当だ」
「先生は……大切な人を亡くしたことがありますか」
ガルドが少し間を置いた。
「ある」
「どうしましたか」
「しばらく、何もできなかった。それだけだ」
「それだけ、ですか」
「人が死んで、何もできない時間は、正しい時間だ。無駄じゃない。ただ、その人がいたことを感じている時間だから」
エイルが手紙を見た。
「……父が最後に言ったこと、覚えています。修行をしっかりやれ、と」
「それが父上の言葉なら、ちゃんと受け取れ」
「はい」
エイルが、ようやく泣いた。
声を上げたわけではない。ただ、目から水が流れた。
ガルドは動かなかった。立ち上がりもしなかった。ただそこにいた。
秀はその部屋にいた。
泣き方がわからない、という言葉が、秀の中に刺さっていた。
感情を表に出すことに慣れていない人間がいる。抑えることが癖になってしまった人間が、悲しみの前でようやく解ける瞬間。
ガルドはそれを急かさなかった。ただいた。
「ただいる」ことが、一番の慰めになるとき、確かにある。




