王宮の委員会
ガルドとエイルが初めて王宮の委員会に出席した日、エイルは入り口で一度足を止めた。
巨大な石造りの建物。高い天井。廊下に並ぶ肖像画。
「大丈夫か」とガルドが聞いた。
「……緊張します」
「そうだろう」
「先生は緊張しないんですか」
「する」
「そう見えません」
「見せないだけだ」
エイルが「なるほど」と言って、背筋を伸ばした。
委員会の部屋には十数人の文官と武官が集まっていた。ガルドとエイルが入ると、視線が集まった。特にエイルへの視線が多かった。若い、という顔をしている。
議題は北方の復興支援策だった。
村への物資支援、道の整備、グレイ・ハンドが引き起こした経済的損害の補償。複数の案が出ていたが、現地の実情と合っているかどうかが問題になっていた。
ガルドが求められて話した。
現地で見た状況を、淡々と述べた。感情は混じえず、事実だけを語った。でもその言葉の一つひとつに、現場を歩いた重さがあった。
委員たちが黙って聞いていた。
後半、エイルも発言を求められた。
「記録書を書いたのはあなたか」とある委員が聞いた。
「はい」
「物資支援の優先順位について、記録書に提言が書いてあったが、その根拠を教えてくれ」
エイルが答えた。
なぜその村を優先すべきか、地理的な条件と人口と、グレイ・ハンドによる損害の度合いを合わせて考えたこと。感情ではなく、論理で説明した。
委員が「わかった」と言った。その目がエイルを評価していた。
帰り道、ガルドが一言だけ言った。
「よくやった」
エイルが「先生に言われると、百人に褒められた気がします」と言った。
「大げさだ」
「でも本当です」
秀はその二人の後ろ姿を見ながら、思っていた。
ガルドが一年前、酒場の隅で飲んでいた男だとは、誰も思わないだろう。
人は変われる。条件が揃えば、どんなに遠くまでも。




