サラとクロウの再会
依頼の二ヶ月が終わり、サラがラメールに戻った日、クロウが待っていた。
食堂ではなく、町の入り口で。
「わざわざ来てくれたんですか」
「お前が持ち帰る地図を、早く見たかった」
「正直ですね」
「お世辞は言わない」
食堂に入って、地図帳を広げた。
クロウがページをめくるにつれて、その顔が変わっていった。
誤りを修正した峠道のページで手が止まった。
「これは、既存地図の間違いを直したのか」
「はい。三回確認しました」
「確認の方法は」
「日を変えて、時間を変えて。地形の特徴と太陽の位置で三角測量の簡易版もやりました」
クロウが少し目を細めた。
「地図師の学校で学んだのか」
「独学です」
「独学で……」
クロウが地図帳を最後まで見た。閉じた。
「ヴェルタ商会から追加の依頼が来ている。今度は南部の海岸線だ。期間は三ヶ月」
「行けます」
「報酬は前回の一・五倍だ」
サラが少し驚いた顔をした。
「それは……」
「この地図の価値に見合う。出し惜しみはしない」
サラが「少し考えさせてください」と言った。
「なぜ考える。行きたいだろう」
「行きたいです。でも父と兄に相談してから決めたい。一人で決める癖をつけたくないので」
クロウがそれを聞いて、少し間を置いた。
「……わかった。三日待つ」
秀はクロウの表情を見ていた。
「一人で決める癖をつけたくない」という言葉に、クロウが何かを感じていた。かつて孤独に仕事をしてきた男が、その言葉の重さを受け取った顔だった。
師匠の死以来、クロウは一人で決め続けてきたのかもしれない。




