表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テアトルムのナレーター  作者: yuruhuwa回路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/99

コルの転機

 夏のある朝、コルが珍しく沈んだ顔をしていた。


 レインが気づいて「どうした」と聞いた。


 コルが少し黙ってから言った。


「訓練場の先輩に、笑われた」

「何を」

「お前みたいな孤児が衛兵になれるわけない、って」


 レインが黙った。


「むかついたけど、言い返せなかった。なんか言い返す言葉が出てこなかった」

「そうか」

「レインは、そういうこと言われたことある?」

「ある」

「どうした」


 レインが少し考えた。


「言い返せなかったとき、悔しくて、その夜に練習した。言い返す言葉より、黙らせる実力の方が、後で効く」


 コルが「でも悔しいじゃないか」と言った。


「悔しい。ずっと悔しい。でもその悔しさが、力になる。捨てなくていい」


 コルが少し考えた。


「悔しさって、捨てなくていいの」

「いい悔しさと、悪い悔しさがある。誰かを恨む悔しさは捨てろ。でも自分がまだ足りないという悔しさは、持っておいた方がいい。それが前に進む燃料になる」


 コルが「……なんかレインって、たまにすごいこと言うな」と言った。


「たまにで十分だ」


 コルが笑った。さっきまでの沈んだ顔が、少し上向いた。


「じゃあ今日の稽古、一時間延長していい?」

「いいぞ」


 二人が訓練場に向かった。


 秀はその後ろ姿を見ていた。


 かつてレインが路地裏で感じていた悔しさが、今コルに手渡されている。形は違うが、同じ種火だ。


 人から人へ、悔しさが燃料に変わって受け継がれていく。


 それも一つの、大切な伝承だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ