レインと困難な判断
初夏のある日、レインに難しい判断を迫られる場面が来た。
市場の近くで、口論になっている二人組を見つけた。一人は商人風の男、もう一人は老婆だ。
「詐欺だ、この品物は偽物だ」と商人が言っている。
老婆は「そんなことはない」と言い張っている。
レインが間に入った。
「どういう状況ですか」
商人が「この婆さんが売った薬草が偽物だった。金を返せ」と言った。
老婆が「本物の薬草だ。私が畑で育てたものだ」と言った。
品物を確認した。乾燥した薬草の束だ。レインには本物かどうか判断できなかった。
「薬師のところへ行って、鑑定してもらいましょう」とレインが提案した。
商人が「面倒くさい、さっさと金を返させろ」と言った。
「それはできません。まず事実確認が必要です」
「衛兵のくせに商人の味方をしないのか」
「どちらの味方もしていません。事実の味方をしています」
商人が舌打ちした。
薬師のところに三人で行った。鑑定の結果、薬草は本物だった。ただ、商人が欲しかったものとは別の種類だった。名前が似ているだけで、全く別の薬草だ。
「お互い、名前の確認が足りなかったということです」とレインが言った。「詐欺ではない。誤解でした」
商人が「それでも使えないものを売られた」と言った。
「それは別の話です。返品交渉をするなら、それはお二人で話し合ってください。ただし脅迫や恐喝は許しません」
商人がレインを見た。若い衛兵に、こういう対応をされるとは思っていなかった顔だった。
結局、商人は代替品と差額の交換で納得した。老婆は何度もレインにお礼を言った。
上官への報告書を書きながら、レインは少し考えていた。
(正しい判断だったか)
完璧ではないかもしれない。でも誰も不当に傷つけなかった。それでいいと思った。
秀はその報告書を書くレインを見ていた。
完璧ではない判断を、それでも正直に振り返る姿勢。それが成長の証だと思った。
完璧な判断ができる人間はいない。でも振り返る人間は、次に良くなる。




